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オフショア開発が抱える課題とは?8つの問題点と解決方法

オフショア開発が抱える課題とは?8つの問題点と解決方法

オフショア開発が抱える課題とは?8つの問題点と解決方法

オフショア開発を検討する際に、具体的にどのような課題があるのか疑問に思ったことはありませんか。

この記事ではオフショア開発の現状をお伝えしながら、業界全体が直面している課題を解説します。発注側と委託先の会社が抱える問題にも言及します。

後半では課題の解決方法を具体的に解説しているので、導入に際して懸念があるオフショア開発の担当者はぜひ最後までお読みください。

島添 彰

合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。

オフショア開発の現状

オフショア開発とは、他国にシステムやアプリなどの開発を委託する開発手法のことです。ここでは、近年広がりつつあるオフショア開発の現状と背景をお伝えします。

ベトナム人気が高い

現在、オフショア開発の委託先としてベトナムの人気が高まっています。人気国ランキングの結果は以下のとおりです。

<オフショア開発委託先国別ランキング>

第1位:ベトナム(48%)
第2位:フィリピン(21%)
第3位:インド(13%)
第4位:バングラデシュ(8%)
第5位:中国、ミャンマー(4%)
第6位:ウクライナ(2%)
(参照:オフショア開発白書(2023年版)│株式会社テクノデジタル

ベトナムでオフショア開発を進めるメリットは、「人件費が安い傾向にあること」「優秀な人材が充実していること」「先端技術をとり入れやすいこと」が挙げられます。

開発のコストカットだけでなく、高品質なプロダクトを制作できることも重視されています。

関連記事:オフショア開発ならベトナムが最適な理由8つと優良な会社の選び方

大手の会社からの注目度が高い

オフショア開発は大手の会社から注目を集めています。

「オフショア開発白書(2023年版)」によると、オフショア開発専門の発注先選定支援サービス「オフショア開発.com」に相談をおこなった会社の規模別割合は、約4割の会社が従業員10名以下であり、100名以下の会社は約6割を超えました。

オフショア開発のメイン層は中小規模の会社であることがわかります。

ところが昨年のデータと比べると、従業員100名以下の会社は69%から62%に、従業員11名~50名の会社は21%から16%に低下しました。

今までオフショア開発は、コストカットを目的に導入されてきました。しかし近年の円安や人件費の高騰が逆風となり、以前よりも勢いが落ち着いています。

これに対して、従業員5001名以上の会社は7%から14%に上昇しています。

(参照:オフショア開発白書(2023年版)│株式会社テクノデジタル

オフショア開発に関心を寄せる大手の会社が増えている背景の1つが、IT人材のリソース確保です。

2030年にはIT人材が最大79万人不足する予測もあるほど、日本全体でIT人材不足が問題視されています。国内のリソースの逼迫を解決するために、大手の会社もオフショア開発を活用しはじめています。

(参照:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果│経済産業省

オフショア開発が抱える8つの課題

オフショア開発の課題を8つ紹介します。

  1. コミュニケーションのとりづらさ
  2. 品質管理の難しさ
  3. スケージュールの遅延
  4. コスト負担の増大
  5. 仕事に対する価値観の違い
  6. 要件や仕様の認識のズレ
  7. 頻繫な人材の入れ替わり
  8. 開発のブラックボックス化

課題は1つではなく、複数が同時に起きていることもあります。具体的な内容を解説します。

コミュニケーションのとりづらさ

オフショア開発では、日本語を母国語としない外国人と仕事を進めることが多いため、コミュニケーションの問題が発生するおそれがあります。

いわゆる言葉の壁です。外国語で細かなニュアンスが表現できず、希望する要件がうまく伝えられないケースがあります。オフショア開発国とは物理的な距離があります。対面でのコミュニケーションがとりづらいことも悩まされる点です。

また、2国間の時差が大きいと、ミーティングの機会は減ります。連絡したいときに、すぐコミュニケーションがとれないこともあるでしょう。

結果的に想定したシステムが完成しないような深刻な問題に発展するかもしれません。

言語の壁を越えるコツは、主語・述語を明確にしてコミュニケーションを取ることです。日本語は主語や述語がなくても、文脈や雰囲気で文意が伝わりやすい言語です。

しかし、英語やベトナム語など外国語は、主語が欠かせません。日本語の特徴により、意味が伝わらないことは珍しくありません。くどいくらいでも構わないので、主語・述語を示したコミュニケーションを心がけましょう。

品質維持の難しさ

2つ目の課題は、プロダクトの品質維持の難しさです。場合によっては品質の低下を招きます。

開発会社で適切なコードレビューが十分におこなわれなかったり、設計書の翻訳が間違っていたりすると、求めていた仕様が実現できないこともあります。エラーやバグが頻発することもあるでしょう。

プログラム修正後に別途不具合が発生し、全体的な品質が低下するリスクも高まります。その結果、大きなトラブルに発展することがあるかもしれません。品質維持の難しさがオフショア開発にはあります。

スケジュールの遅延

予定していたスケジュールよりも進捗が遅れると、納期を変更しなければなりません。

「個人が細かくスケジュール管理をする習慣がない」「時差によって情報共有に時間がかかる」などの点が、スケジュール遅延の主な理由です。

スケジュールを調整するには手間がかかります。スケジュールは守られることが前提で、日本人と仕事をするような感覚でいるとうまくいかないかもしれません。

オフショア開発では、コミュニケーションにかかる時間が多くなります。スケジュールを都度確認して、プロジェクトを進める必要があると認識しておきましょう。

コスト負担の増大

コストカットを目的にオフショア開発を導入しても、想定したような削減ができないこともあります。進行がうまくいかずプロジェクトの遅延により、開発コストの増大につながるおそれがあるからです。

通訳や十分なチーム体制の手配、プロジェクト序盤での予算の確保、設計・ディレクション費用など開発会社に支払う金額、メール配信サービスやオンライン決済サービスなどよく使う有料サービスの利用料を正確に計算していないと、想定以上の開発費がかかるかもしれません。

円安による為替変動がコスト増の原因になることもあるため、オフショア開発を導入すれば必ずコストカットできるわけではないことを知っておきましょう。

仕事に対する価値観の違い

他国と日本の価値観に差が生じることも、オフショア開発の大きな課題です。

仕事に対する考え方や商習慣は、国民性や宗教観によって左右されます。この違いを理解しなければ、コミュニケーションエラーによって業務に支障が出ることもあるでしょう。

たとえば、日本では忙しいときは残業することも珍しくありませんが、オフショア開発国の中には、残業が一般的ではない国もあります。文化が異なる他国でビジネスをおこなうなら、その国の考え方を理解する必要があります

要件や仕様の認識のズレ

プロダクトの要件・仕様が開発会社にうまく伝わらず、オフショア開発そのものが失敗するリスクもあります。

要件定義や仕様決定の上流工程で認識をすり合わせておかないと、下流工程で不具合が発生しやすいからです。

場合によっては、海外の仕様に沿ってシステムが構築されるおそれがあります。開発前の時点で仕様・要件を細かく決め、業務を進めることが重要です。

頻繫な人材の入れ替わり

オフショア開発では「担当者がすぐに入れ替わる」「短期間でIT人材が辞めてしまい、定着しない」ことが起こりえます。海外は日本よりも転職意欲が高い傾向にあるためです。

経済産業省の「IT人材に関する各国比較調査 結果報告書」で、これまでに経験した転職の回数を日本と他国で調査したところ以下のような結果となりました。

海外では、よりよい条件の仕事を求めて、キャリアアップのため積極的に転職をする人が多いようです。そのため人材の流動性が高くなります。

(引用:IT人材に関する各国比較調査 結果報告書│経済産業省

担当者が入れ替わると、そのたびにいちからプロジェクトの内容を説明したり、人間関係を構築したりする必要が出てきます。

たとえ優秀なIT人材を獲得できても、業務負担が増えるとオフショア開発のメリットを見い出せないかもしれません。

開発のブラックボックス化

ブラックボックス化とは、業務の進捗やプロセスがわからなくなることを指します。

オフショア開発は自分の目で開発状況を確認できないため、現在どの程度まで開発が進んでいるのか不明確になりがちです。

状況を確認できたときにはシステム修正が必要な状態に陥っている可能性もあります。ブラックボックス化することで、大きなトラブルに発展することもあるでしょう。

オフショア開発の課題を解決する4つの方法

この章では課題や問題を解決するために知っておきたい方法を4つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。

  1. コストの洗い出し・予算確保をする
  2. 自社で進捗状況を確認する
  3. 仕様・要件は明確に指示する
  4. 定期的にコミュニケーションをとる

オフショア開発にはたしかに課題が存在します。しかし適切に対処をすれば、重大なトラブルは回避できるでしょう。

コストの洗い出し・予算確保をする

オフショア開発導入に発生する人件費と人件費以外のコストを細かく洗い出しましょう。

ここで算出したデータを元に余裕を持った予算を用意しておくことで、修正の発生などをはじめとした不測の事態に対応できるからです。

なお、オフショア開発のコストは人件費と人件費以外の2つに大きく分けられます。人件費以外がかかるかどうかは契約形態によって変わります。

【人件費】

  • エンジニアの人件費
  • 別途、通訳やブリッジSEなどを手配する際の費用
  • システムの設計費、ディレクション費用
  • 運用・保守費用

【人件費以外】

  • 渡航費・滞在費

費用は開発規模・内容によって大きく異なります。まずはコストを洗い出すことで、確保すべき予算が明確になります。

関連記事:「オフショア開発の費用|国別の単価相場とコストを抑える方法

自社で進捗状況を確認する

開発会社に一任してブラックボックス化する問題を防ぐには、自社で進捗状況を確認することが有効です。

プロジェクトの進捗を可視化させたり、タスクを細分化したりすることで、スケジュールや品質、人材の状況を把握しやすくなります。

たとえば「プロジェクト管理ツールを使って進捗を確認する」「エンジニアごとにタスク管理をして、その日の作業報告をブリッジSEから受ける」などの方法です。

自社にリソースがあれば、進捗管理を開発会社ではなく委託側が担うことも可能です。ラボ型開発と呼ばれる準委任契約を締結すれば、進捗状況の確認が自社でしやすくなります。

ラボ型開発とはIT人材を一定期間自社の専属メンバーにし、開発業務を進めることを指します。

また、その日の状況や優先順位によってタスクを変えながら、プロジェクトを進めることが可能です。

自社の開発専属メンバーとより密にコミュニケーションを取ることで、ブラックボックス化を防げます。加えて、技術的な会話ができることも重要です。窓口となる担当者がどれだけITに精通しているかも、プロジェクトの進捗にかかわります。

関連記事:「ラボ型開発とは?メリットとデメリット、請負型との違い

仕様・要件は明確に指示する

プロダクトの仕様・要件は、できる限りわかりやすく明確な指示を出すように意識しましょう。

海外では「空気を読んで進めていく」文化があまり見られないためです。場合によっては、指示していない業務に追加料金が請求されることもあります。

【事業に関する内容】

  • 開発目的やターゲット
  • 今回達成したい開発のゴール

【仕様に関する内容】

  • タップの操作性
  • ページの遷移
  • デザインのレギュレーション

これらをはじめとした仕様の詳細を、図も使いながら漏れなく説明しましょう。その際もあいまいな表現を使わないように心がけてください。

仕様・要件の最終チェックができる体制も整えておくとなおよいでしょう。

定期的にコミュニケーションをとる

開発会社と頻繁に質の高いコミュニケーションをとることが、プロダクトの品質維持には重要です。

定期的な対話を重ねることで、認識のズレを修正したり、必要な改善ができたりするからです。

具体的には「毎週定例ミーティングを実施する」「工程ごとに報告会をおこなう」などの方法をおすすめします。

ミーティングでは必ずアジェンダを準備して、議事録をとりましょう。話した内容の振り返りや、議論によって決定した事項やタスクの共有に役立ちます。

またコミュニケーションをとる際は、言葉づかいにも注意しましょう。日本語特有の曖昧なニュアンスは伝わりづらく、誤解が生じやすくなります。明確な言葉でのやりとりを心がけてください。

課題を回避するオフショア開発会社の選び方3選

はじめて導入を検討する場合でも、課題を事前に回避して開発を進められるよう、オフショア開発会社の選び方をまとめました。

  1. IT投資を最適化できる会社を選ぶ
  2. 適切な契約方法を選ぶ
  3. 日本との豊富な取引実績がある会社を選ぶ

3つの内容を具体的に解説します。

IT投資を最適化できる会社を選ぶ

大きな失敗をしないためにも、IT投資を最適化できる会社を選ぶ必要があります。

IT投資の最適化とは、プロジェクトのフェーズに合った規模で投資をし、ニーズに応じて拡張していくことです。

システム開発は中長期に及ぶことも少なくありません。例えば、初期段階からプロトタイピングと本開発を分けず、すべてをシステム化すると、初期コストが膨らみます。そのままプロジェクトを進めることで、後戻りもしづらくなります。

弊社「Solashi Co., Ltd」は、IT投資金額を拡大しすぎないことを大切にしている会社です。適切な規模の投資をおこなうことで、失敗を避けられるようなサポートを目指しています。

開発プロジェクトに適した規模で投資することで、ビジネスの成功率を高めやすくなります。無駄なくプロジェクトを進めていきたいなら、ぜひ弊社までご相談ください。

適切な契約方法を選ぶ

プロジェクトの特性に合わせた契約方法を選ぶのも大切です。

オフショア開発の契約には請負契約とラボ契約の2種類があり、それぞれ特徴やメリットが異なります。

特徴メリットデメリット
請負契約・明確な納期やプロダクトの仕様が決められている・単発案件・短期案件に適している・単発案件に適している・成果物に関する責任が明確である・追加費用がかかることもある
ラボ契約・専属の開発チームを構成し、一定期間開発業務をおこなう・継続案件・長期案件に向いている・仕様変更などに対応しやすい・優秀なIT人材を活用できる・要件が決められずスケジュールが遅延すると費用が膨らむ

プロジェクトに適した契約方法を選ぶことで、予期せぬトラブルを避けやすくなるでしょう。

日本との豊富な取引実績がある会社を選ぶ

これまで日本の会社と多く取引してきた開発会社を選ぶこともおすすめします。日本との取引実績が豊富な会社は、日本の商習慣や文化をよく理解している傾向にあるからです。

  • 日本語でメール・チャットのやりとりができる
  • 日本人や日本語が堪能な外国人が在籍している
  • 日本法人が存在する
  • レスポンスが早く、スピーディーな対応ができる

このような特徴がある開発会社を複数探し、各社の特徴を比較しながら自社に最適な会社を厳選しましょう。

技術力の高いオフショア開発会社ならSolashi

オフショア開発には多くの課題が存在しますが、「IT投資を最適化できる会社」「日本との取引実績が豊富な会社」などを選べばプロジェクトを進めやすくなるでしょう。

安心してオフショア開発を導入したいなら、弊社「Solashi Co., Ltd」にぜひご相談ください。

弊社は、技術要件に関する理解度が高い日本人PMのいる開発会社です。高い技術力を誇り、現地メンバーは言語の壁も乗り越えています。事業を理解しようとする姿勢や、持続可能な運用・保守を維持できる点もポイントです。

また、オフショア開発国として高い人気を誇るベトナムを拠点としています。ベトナムはIT教育を国が主導しているため、優秀なエンジニアが多く、品質が高いことで定評があります。

弊社でも、理工系最上位クラスの大学を卒業したベトナム人エンジニアを中心に採用しており、高い技術力の提供が可能です。。

オフショア開発を検討しているなら、課題克服力が強い「Solashi Co., Ltd」にお問い合わせください。

島添 彰

合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。

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