「オフショア開発の事例を知って、自社の開発にも取り入れられるか検討したい」
「これまでの事例を把握し、オフショア開発に適したプロジェクトの特徴を知りたい」
このような声にお応えして、ベトナムでオフショア開発会社を手がける「Solashi Co., Ltd」が、これまで携わってきた事例を紹介します。
教育テックや人材派遣、NFTのプロダクトの案件を取り上げ、開発の背景・進め方・成果を細かく区分して解説します。
オフショア開発に向いている案件の特徴やよくある失敗事例もまとめました。オフショア開発を成功させるためのヒントとして、ぜひお役立てください。
監修者プロフィール
島添 彰
合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。
オフショア開発の成功事例3選
ベトナムでオフショア開発会社を運営する「Solashi Co., Ltd」の成功事例を3つ紹介いたします。
教育テックのITサービス開発│Edv Path
【プロダクトの概要】
受託内容 | 詳細設計、開発、テスト、運用、保守 |
開発内容 | クライアント向け画面(Web / API)、管理画面、障害時の調査・対応 |
費用 | 非公開 |
期間 | 13カ月(現在もラボ型にて開発中) |
メンバー | プロジェクトマネージャー/ブリッジエンジニア1名、フロントサイドエンジニア1名、サーバサイドエンジニア2名、テスター0.2名 |
使用技術 | Nuxt.js (VueJs)、Golang、Docker、GCP、Terraform |
教育現場における非認知能力の測定・向上を目的としたITサービスの開発全般を担当した事例です。
開発の背景
クライアントはスタートアップの会社で、「フルタイムで動ける開発メンバーがいない」という課題を抱えていました。
開発したい案件は沢山あるにもかかわらず、なかなか取りかかれない状態が続いていたため、弊社に開発業務を依頼していただいた背景があります。
開発の進め方
開発フローの定義・開発進行を実施しました。アサインしたのは、日本人プロジェクトマネージャー(以下、PM)2名とエンジニア合計4名です。
「Microsoft Azureを使いSSOを実装するシステム要件」といった、多くの人が経験していないようなシステム要件が、ビジネスサイドから提案されました。
弊社のエンジニアとクライアントが力をあわせて、公式ドキュメントの調査やシステムの実装、リリースをおこなったところがポイントです。
弊社は「開発会社が今後の対策を提案するだけでなく、クライアントとともに意見を出し合いながらものづくりを進めていくこと」を大切にしています。
よって、クライアントだけでは解決できない課題・弊社だけでも解決できない課題を、チーム全体で取り組める状態を目指しました。
開発の成果
本事例では、対応しなければならないタスクを期日までにほぼ100%完了させました。また、開発の節目には、リファクタリングやテストコードの開発を提案することで、弊社で自走しながらプロジェクトを進行しています。
リファクタリングとは、プログラムの内部構造の整理を指し、ソースコードを検査・整理することです。品質や開発速度を向上させるためにおこないます。
今後やるべきことを弊社がクライアントに対して適宜投げかけたため、お客さまも含めた開発チーム全体の結束力も高まりました。
人材派遣のマッチングアプリ・システム開発│NEKONOTE
【プロダクトの概要】
受託内容 | 要件定義、基本設計、詳細設計、開発、テスト、デザイン、リリース、運用、保守 |
開発内容 | iOS/Androidアプリ、管理画面(Web) |
費用 | 非公開 |
期間 | 7カ月 |
メンバー | プロジェクトマネージャー/ブリッジエンジニア1名、フロントエンドモバイルアプリエンジニア2名、サーバサイドエンジニア2名、テスター1名 |
使用技術 | React Native、PHP(Lumen framework), Vuejs、AWS |
適切なシステムをリリースできる環境になかったクライアントから依頼を受け、人材派遣業務をアプリ化した事例です。1日単位の短期派遣のマッチングシステム・アプリの開発に携わりました。
開発フローや開発体制が整っていないクライアントに対して提案をおこなった事例です。
開発の背景
クライアントの社内にはエンジニアが在籍しておらず、人材派遣業務を手動でおこなっていました。業務量を削減するために、ある開発会社に業務のシステム化を依頼したそうです。
ところが、製品面でのトラブルが起きました。納品後の検収が十分ではなく、開発会社からの説明も足りない点があったこともあり、結果納品物をそのまま業務に利用することはありませんでした。このような背景から、お金を使って完成させたシステムが稼働しない状態のままでした。
このようなお悩みを抱えている中で、弊社にオフショア開発のご相談をしていただいた流れです。
開発の進め方
プロジェクトは、アプリの最小限の改善をした後、より使いやすいサービスにするための修正をする流れでおこなわれました。
弊社に依頼していただいた時点でのシステムは、アプリストアの審査に落ちてしまうほど正常に動作しない状態だったからです。
アプリの根幹からシステムを作り直し、3カ月でアプリストアに掲載できる状態まで内容を修正しました。
その後、開発フローの見直しや現地メンバーの意見抽出、ベトナムメンバーに内容を理解してもらうためのPMによる言語化などを実施しました。
なお、この際にものづくり補助金の申請も進めています。
関連記事:「【2024年最新】ものづくり補助金とは?条件や申請手順を徹底解説」
開発の成果
結果的に、ほぼ問題なくアプリのリリース・運用を実現できました。
ものづくり補助金が採択されたことにより、十分な開発予算をもとにプロダクトの改善を実施できたからです。
さらに、クライアントが開発環境を整えるためのマインドセットに力を入れたことも、本事例のポイントです。
一つは、補助金申請や資金調達など、システムが開発十分にできる予算を確保するための、財務や経営面での環境づくりをおこないました。
もう一つは、ITに明るくない、アナログな業務をおこなっていた従業員の方に「ITを使って業務を効率化していく」ことの意識を醸成することに力をいれた点です。
これらのマインドセットにより、開発フローも問題なく回り、現在は保守中で日々プロダクトの改善ができています。
ただシステムの構築をサポートするだけでなく、より良い開発方法を提案することで、クライアントの事業成長に導いた事例です。
NFTのWebサービス開発
【プロダクトの概要】
受託内容 | 要件定義、基本設計、詳細設計、開発、テスト、デザイン、リリース、運用、保守 |
開発内容 | クライアント向け画面(Web / API)、管理画面、ERC721を利用したスマートコントラクトの実装 |
費用 | 非公開 |
期間 | 7カ月 |
メンバー | プロジェクトマネージャー/ブリッジエンジニア1名、フロントサイドエンジニア2名、サーバサイドエンジニア2名、テスター0.2名 |
使用技術 | Material UI、Next.js、Node.js、Solidity、Polygon network、Alchemy、IPFS、AWS |
こちらの事例では、Web3.0の領域にもまだ存在していない、NFT関連の新しいサービスを扱いました。Web3.0とは、次世代のインターネットを意味する概念のことです。
開発の背景
クライアントの代表者は、豊富なIT知識を持ちながらも、なかなか開発業務の時間がとれないことに悩まれていました。そこで弊社に、開発業務のご依頼をいただきました。
クライアントのご要望は、NFTの形態の1種であるFree Mint・Free Transferを実現したWebサービスを開発したいとのことでした。
具体的には以下のWebサービスです。
- NFTのMint、Transferの際、ガス代を必要としないマーケットプレイス
- 社会問題解決支援のためのクラウドファンディング、アートNFTを受け取れるサービス
いずれも、今はまだ一般的ではない技術ですが、クライアントと協力をしてプロジェクトを遂行しました。開発を進めるにあたって、ものづくり補助金も申請しながら、我々と会話を深めていきました。
開発の進め方
まずはブロックチェーンのプロトコルにおける仕様調査、テストネット構築・金額の試算を実施しました。
次におこなったのが、決済サービスとの連携・請求書や領収書の自動発行など、機能の設計・構築です。
仕様調査やテストネット構築の技術調査は、クライアントによる実施が一般的です。しかし、弊社は調査段階からチームに参加したため、クライアントのアイデアが実現可能であることを証明できました。
こういった進め方は珍しく、一般的な開発会社ではあまり見られません。
開発の成果
この案件では、難しい課題をクライアントとともに乗り越え、クライアントのアイデアを形にできたことが大きな成果でした。
乗り越えた課題は、以下の通りです。
- すでに調査していた多くのプロトコルが、仕様を詰める過程で諦めざるを得なくなったこと
→ゼロから新しいプロトコルの調査を実施 - 利用しようとしていた決済サービスが急に利用できなくなったこと
→別の決済サービスの検討・調査・実施・リリース
弊社が実現し続けたいのは、お客さまのものづくりのアイデアを形にし、グロースさせていくことです。日本でものづくりのアイデアがありながらも、IT課題があって実現できていない会社をサポートしたいと考えています。
今回、多くの課題をクライアントと一緒に克服することで、事業成長につながるご支援ができました。
オフショア開発のよくある3つの失敗事例
オフショア開発の業界全体を見てみると、成功事例だけでなく、失敗事例も見受けられます。オフショア開発の失敗事例を3つ紹介するので、参考にしてください。
品質の低い成果物が納品された
費用が安い開発会社に開発を依頼して、低品質な成果物が納品されるケースです。
技術的なスキルや、品質管理の体制はオフショア開発会社によって異なります。安くても品質が安定しない会社に依頼をすると、不具合が発生しやすくなります。
低品質な成果物の例はこちらです。
- 正しく作動しないプログラム
- 可読性が低く、バグが発生しやすいソースコード
オフショア開発では、日本では当たり前とされているような対応があまり期待できません。
「仕様書に記載されていない内容でも、品質を担保するために、暗黙の了解で担当者が処理してくれる」ような考えを持っていると、失敗を招きやすくなります。
品質低下を防ぐには、都度細かな部分までわかりやすく指示をすることが求められます。コミュニケーションに要する時間がかかるため、かえってコスト高になるかもしれません。
想定と異なるシステムが完成した
想定と異なるシステムが成果物として納品されることもあります。
一次請けの会社が要件を整理できないまま設計が進行し、二次請けの会社が設計から開発までおこなう場合に見られるケースです。
オフショア開発では、一般的に業務システム開発でよくあります。
要件と設計のギャップが生じたまま、スケジュールにあわせて開発が進行した結果、実装をすると想定外のシステムができ上がることになります。
あらためて要件を整理してみると、まったく違うシステムが必要になることがわかり、開発をやり直そうとしてもコストも時間も足りません。結局、使えないシステムが誕生することになりかねません。
費用対効果が得られなかった
費用対効果が得られないケースです。システムの仕様がなかなか決まらない場合によく見られます。
仕様が定まらないことで、システムに必要のない機能や効果のない機能を搭載し、開発が一旦終了になるからです。
ほかにも「人件費が上昇した」「ITリソースを有効活用できなかった」などの理由も考えられます。
コストパフォーマンスを重視するなら、仕様を定めることは必須です。さらにプロジェクトの規模に応じて、IT投資を最適化できる開発会社を選定する必要があるでしょう。
関連記事:オフショア開発は失敗しやすい?事例・原因・対策まで完全解説!
オフショア開発が向いている案件の特徴4つ
オフショア開発が向いている案件の特徴を4つまとめました。
- 柔軟な対応が求められる案件
- 世界的に定番のプロダクト
- 高度な技術・最新の技術が必要なプロジェクト
- システムの改修・保守運用
自社が検討している案件の特徴と照合しながら、内容を確認してみましょう。
柔軟な対応が求められる案件
オフショア開発に適しているのは、柔軟な対応が求められる案件です。プロジェクトによっては、仕様の変更・修正が入ることで、その都度、対応が必要になるからです。
とくに事前に成果物や責任範囲を定めず、臨機応変に開発を進めたい場合は、ラボ型開発をおすすめします。
ラボ型とは、作業要員と作業時間に応じて報酬を支払うオフショア開発の契約です。契約期間内は追加費用を支払わずに人的リソースを自由に使用できます。
プロジェクトの進捗にあわせて人員を増減することも可能です。詳しくは「ラボ型開発とは?メリットとデメリット、請負型との違い」をご覧ください。
ラボ型開発は、アジャイル開発との相性がよいといわれています。アジャイル開発は、開発を細かなサイクルに分けて、機能を少しずつ実装するやり方です。
「Solashi Co., Ltd」では、ラボ型開発によるスモールスタートが可能です。はじめてオフショア開発を導入する会社も、予算を抑えながら必要最小限でシステム開発が進められます。
また、仕様書がなくてもアジャイル式で開発をはじめることが可能です。
弊社iのお客さまで、スタートアップの会社、新規事業を立ち上げられる方の殆どは、リリースを優先するため、仕様書ではなく、プロトタイプのリリースをしてから品質改善・機能拡張をおこなっています。
Webフレームワークを利用した高速なプロトタイピング、アジャイル開発のアプローチにより、品質とスピードを両立する開発を実現させています。ラボ型開発、アジャイル開発にご興味があれば、弊社までご連絡ください。
世界的に定番のプロダクト
世界的に広く利用されている以下のようなプロダクトは、オフショア開発を成功させやすいといわれています。
委託先の国でも使われているシステムなら、細かな仕様を説明しやすいからです。
- ECサイト
- SNSアプリ
- コーポレートサイト
委託先の国では一般的ではない文化(カーシェアリングやゴミの分別など)をもとにした開発は、時間がかかるかもしれません。
高度な技術・最新の技術が必要なプロジェクト
オフショア開発には、高い技術が求められる「AI」「ブロックチェーン」などを扱う案件が適しています。
自社に該当技術のノウハウが蓄積されていない場合でも、知見のあるIT人材を開発チームにアサインできるからです。
オフショア開発の委託先として有名なベトナムやインドは、IT人材のレベルの高さも話題を呼んでいます。
特にベトナムは国家を上げてIT人材の育成に力を入れており、2030年までに150万人ものIT人材輩出を目指している国です。
高度な技術や最新の技術に対応できる、優秀なエンジニアも多くいます。高難度の開発を検討している場合は、委託先としてベトナムを選ぶといいでしょう。
システムの改修・保守運用
システムの改修や保守にオフショア開発を利用する方法も有効です。
- 改修:既存システムの機能を追加・修正すること
- 保守:データベースのチューニングや不具合を修正すること
改修・保守業務は、基本的に該当するシステムがサービス終了するまで実施し続けなければなりません。
人員不足の企業の場合、終わりが見えない業務に貴重な人員を割くのは避けたいところでしょう。
改修・保守業務をオフショア開発会社に任せることで、リソースに余裕ができます。その分、自社のIT人材を新規事業の開発業務に充てられます。
オフショア開発の適切な活用により、改修・保守のリソース不足を解決できるだけでなく、事業成長につながる体制を構築しやすくなるでしょう。
オフショア開発の事例から学ぶ成功のポイント2選
オフショア開発の事例から学ぶ成功のポイントを紹介します。
オフショア開発を成功させるには、実現したい業務内容の言語化と企業選びが重要です。
実現したいことを言語化する
業務のどの部分を「自動化・保存・高速化・管理」したいのか、なるべく具体的に言語化する必要があります。
あいまいなイメージで依頼すると、想定と異なるシステムが開発される可能性があるからです。
たとえば「荷物の管理を自動化させたい」では説明が足りません。「弊社で預かる荷物にそれぞれの番号を割り振り、システムでステータス管理したい」のように、希望内容をより細かく説明しましょう。
なお、要件定義をおこなうにはプロを巻き込んで一緒に実施することをおすすめします。既存の業務フローをもとに開発する場合に、何を実現したいのか、システムが何に責任をもつか言語化しなければなりません。
それには思考のフレームワークの導入や適切な問いかけが求められるからです。プロが入ることで、実現したいことをうまく言語化できます。
実績のある開発会社に依頼する
オフショア開発を依頼する際は、実績のある開発会社を選びましょう。
オフショア開発は、以下のようなフローで進みます。
- オフショア開発の国・会社を選ぶ
- 見積もり・面談で複数社を比較する
- 選定した会社と契約を締結する
- プロジェクトの進捗状況を追う
- 成果物を確認する
最初のステップである企業選びは非常に大切です。成功事例が豊富な会社には、プロジェクトを成功させるためのノウハウが社内に蓄積されています。
ここでは、自社が求めるプロジェクト内容と類似性がある成功事例を探すことを重視してください。
プロジェクト開始後、業務がスムーズに進みやすくなるでしょう。チェックしておきたいポイントは以下の通りです。
- 開発規模
- 成果物の内容
- 開発期間
- チームの人数
加えて、日本企業との開発実績が豊富であることも重要です。日本人PMや日本語が堪能なブリッジSEが在籍している会社は、円滑なコミュニケーションが取りやすくなります。
オフショア開発なら成功事例が豊富なSolashiにおまかせ
オフショア開発を導入するなら、ベトナムの開発会社である「Solashi Co., Ltd」がおすすめです。
「開発環境が整っていない状態からプロジェクトを進めた事例」から「先端技術を開発した事例」まで幅広い成功事例があります。
弊社は、事業の成長に対してコミットする会社です。コストを抑えるだけでなく、企業理解に力を入れ、ともにサービスを作り上げていくことを重視しています。
- ハノイ工科大学をはじめとしたトップクラスの大学を卒業したIT人材が多くそろっている
- 先端技術にも対応できる
- 技術レベルが高い日本人PMも在籍している
- 日本語でのコミュニケーションも問題なくおこなえる
オフショア開発なら事業成長にコミットする「Solashi Co., Ltd」に、ぜひご相談ください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。