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生成AIでパッケージデザイン提案が2週間から15秒に!――老舗パッケージメーカーが挑む生成AI機能開発【岩嵜紙器様】

生成AIでパッケージデザイン提案が2週間から15秒に!――老舗パッケージメーカーが挑む生成AI機能開発【岩嵜紙器様】

生成AIでパッケージデザイン提案が2週間から15秒に!――老舗パッケージメーカーが挑む生成AI機能開発【岩嵜紙器様】

長崎県の老舗パッケージメーカー岩嵜紙器が、Solashiとともに生成AIによるパッケージデザイン生成機能開発に挑みました。デザイン提案にかかる時間を2週間から15秒へと短縮し、営業活動の革新的な改善を実現しました。システム開発の経験がない企業が、いかにして最適な開発パートナーを見つけ、成果を上げたのか。今回は、株式会社岩嵜紙器の道枝さんにお話を伺います。

創業64年のパッケージメーカーが生成AI機能の活用へ

――まずは貴社の事業について教えていただけますでしょうか。

道枝さん:
私たちは長崎県波佐見町にある、パッケージの総合メーカーです。パッケージには、簡単な折りたたみ箱と手張りが必要な貼り箱の2種類がありますが、当社はとくに高級な貼り箱をオリジナルで製造することに力を入れています。当社のパッケージは、飲食店やお菓子屋さんのほか、当社の周辺にある波佐見焼や有田焼などの焼物を入れる箱として使われることが多いです。

――AIによるパッケージデザイン生成システムの開発に取り組まれた背景を教えてください。

道枝さん:
当社は、創業から64年になりますが、もともと段ボール箱の加工からスタートして、徐々にパッケージの高級化により、パッケージの価値を高めてきました。パッケージメーカーでは、デザインをデザイン会社におまかせすることが一般的です。ですが、当社では自由度の高い企画力を売りにし、デザイン制作にも力を入れて取り組んでいます。

ですが、デザインにかかる工数と時間に課題がありました。従来の制作フローは、お客様と打ち合わせした後、その内容を営業からデザイナーに伝え、デザイナーが実際のデザイン作業にあたるという流れでした。打ち合わせからデザイン提案までにおよそ2週間、その後の修正には1週間ほどかかっていました。

パッケージメーカーとしては早い方ですが、お客様からは時間がかかると言われるケースも少なくありません。そのため、デザイン提案に時間がかかることによる機会損失は多い印象です。

また、提案までの2週間でお客様の考えが変わってしまうこともあります。なかには、修正が入ってから最終的にイメージが違うからといって辞退されるという案件もありました。デザイナーにとって、成約できるかわからない中、デザイン案をいくつも作成し、その後も繰り返し修正が発生することは大きな負担になっていました。

自社の課題解決に生成AIを活用

――プロジェクトが始まったきっかけを教えていただけますか。

道枝さん:
十八親和銀行が主催する「JSB新規事業創出プログラム2023」に参加したことがきっかけです。長崎県内の地域中核企業とスタートアップ企業がオープンイノベーションに取り組む、9ヶ月におよぶプログラムです。そのなかで、私たちは自社課題の解決について考えました。

その過程で、デザイン周りの課題を解決できないか、と思い至ったのです。パッケージイメージのすり合わせをスムーズにすることで、デザイナーの負担を減らし、営業がその場で提案できるようにしたい、という思いからスタートしています。

――生成AIに着目した背景はどういったものだったのでしょうか。

道枝さん:
弊社の代表があるニュースで、大手飲料メーカーが生成AIを使ってラベルのデザインを制作したというのを知って、これを当社でも活用できないか、と持ちかけてきたんです。実際に生成AIアプリを触ってみると、ものの数秒で数十パターンのデザイン案が生成されてきて、私もこれをパッケージデザインに活用したい、と思いました。

ただ、機能開発に着手する前に自分たちで生成AIを調べましたが、発展途上の技術で情報が少なく、何が正しいのか判断が難しくなりました。ですから、自分たちだけで取り組むことには、懸念があったんです。

最初の面談でいきなりプレゼン。「ここまで考えてきてくれるのか」と驚いた

――これまでシステム開発の経験がないと伺いましたが、それについて不安はありましたか?

道枝さん:
正直、不安しかありませんでした(笑)。ですが、プロジェクトを主催する十八親和銀行さんや支援企業さんが、手厚くサポートしてくれました。また、Solashiも当社のことを真剣に考えながら、提案や開発をしてくれたので、安心して進められましたね。

――開発パートナーとしてSolashiを選んだ理由は?

道枝さん:
はじめ、プロジェクトの支援会社から、生成AIに強いスタートアップ企業をピックアップいただきました。そのなかから8社に絞りこんで、実際に面談することになり、Solashiはそのうちの1社です。

Solashiの第一印象は、驚きの一言でした。島添さんは、最初の面談でいきなりプレゼンをしてくれたんです。私たちが考えていることから、その先に起こりうることまで入念に想定して、実際にその場でデモンストレーションまでしていただきました。他社が様子伺いな状態だったなか、「ここまで考えてきてくれるのか」と驚きましたね。

――最終的な決め手はなんだったのでしょうか?

道枝さん:
一番は島添さんの人柄ですね。面談でも、当社のことを本当に考えて来てくれている実感が持てました。話しやすさもありましたし、こちらの考えを話すと、すぐに何歩も先の未来を予想して提案してくれました。実際に福岡まで来ていただいたこともあり、その熱意に惹かれましたね。

既存の技術を活用し現実的なアプローチで機能を実現

――開発手法について、どのような選択をされましたか?

道枝さん:
最終的には、既存の生成AIサービスに、パッケージデザインに特化した機能を追加する形を採用しました。一から生成AIを構築する提案も他の会社から受けていたんですが、予算はかなり高額でした。加えて、既存のAI技術を活用する方法と比べて、クオリティに大きな差がないことがわかったんです。コストパフォーマンスを考えると、既存技術を活用する方が合理的と考えました。

その後、開発のなかでは当初Stable Diffusionを利用する予定だったのですが、途中Solashiからの提案で、より効果の高いDall-E 3を活用したシステムに変更しました。依頼してから先のことはほとんどSolashiにお任せの状態で、問題なく進めていただきました。

――開発過程で苦労された点はありましたか?

道枝さん:
生成されるパッケージの形状のチューニングが大変でした。例えば、四角の箱を生成するように指示しても、当初はまったくイメージと違う箱が出てきたりしていたんです。

そこで、SolashiにAIの指示の仕方をレクチャーしてもらったり、AI自身の学習を進めることで、イメージ通りのものができるようにしてもらいました。

他にも、システムの日本語対応など、使いやすさの面でも多くの工夫をしていただいています。

2週間かかったデザイン提案が15秒に

――実際に導入されてからの変化を教えてください。

道枝さん:
いまは、お客様との打ち合わせで、要望を聞きながらその場でデザインを生成できるようになりました。15秒ほどでデザイン案が出てくるので、その場で提案できるだけでなく、お客様の反応を見ながら、さらに別の案を出すこともできます。

お客様の目の前でデザインを生成できるようになったことで、提案がより具体的になり、営業ツールとして非常に強力だと実感しています。

――デザイナーからの反応はいかがですか?

道枝さん:
従来はイメージ提案に多くの時間と労力を使い、本番のデザインの時間が限られていました。ですが、この機能を使うことで、提案のための工数が削減でき、その分本番の制作により力を注げるようになりました。より質の高いデザインを限られた時間内に作れるようになった、と評価してもらっています。

――当初想定していなかった効果はありましたか?

道枝さん:
あるロゴ制作のときに、その場でAIを使ってデザインを生成して見せたところ、「デザインの幅が広がって助かる」と代理店さんから評価をいただきました。パッケージメーカーはデザイン力がない、という先入観を覆せたと思っています。

自社での活用だけでなく、サービスとして新たな事業へ

――今後のサービス展開についてはどのようにお考えですか?

道枝さん:
現在は主に既存のお客様への提案を行っていますが、今後はさらに幅広いお客様からのご依頼に対応できる体制を整えていきたいと考えています。

また、社内での活用だけでなく、機能の外販に向けての事業計画を策定中です。現在は検証段階にあり、2025年の春のサービス公開を目指して、具体的な検討を進めています。

――どのような企業をターゲットとしてお考えですか?

道枝さん:
まずは同業のパッケージメーカーをターゲットと考えています。多くのパッケージメーカーは、デザインに対する課題を抱え、その解決を諦めているのが現状です。このデザイン生成サービスを他のメーカーが利用することで、業界全体が活性化していくきっかけになる、と期待しています。

――システム開発パートナーを選ぶ際の重要なポイントはなんでしょうか?

道枝さん:
重要なのは『先を見据えた提案力』だと感じています。単なる技術力だけでなく、その技術をどう活用し、どのような未来を描けるのか、具体的に示せるパートナーであることが大切です。

また、発想の柔軟さも大切だと思います。私たちのプロジェクトでは、一からシステムを構築しなくても、既存システムを活用することで、十分実用的なソリューションを提供できるとわかりました。そのような費用対効果の高い選択肢を提示していただけたことは、大変ありがたく感じています。

加えて、信頼関係も欠かせない要素です。私たちはシステム開発の経験がなく、不安も多い状況でした。そんな中で、Solashiは親身に相談に応じ、細やかなコミュニケーションを取ってくれました。その姿勢から、安心して任せられると感じ、自然と信頼へとつながりました。

関係を長く続けていくためにも、やはり人との相性や信頼関係が大切なんだと、今回あらためて実感しました。

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