スタートアップにとって、システム開発は大きな挑戦です。限られた資金と時間のなかで、将来の成長を見据えたシステムを構築しなければなりません。そんな課題に直面していた株式会社KAENは、Solashiへシステム開発を依頼。その結果、セールスプラットフォーム「TAAAN」は、わずか2年で900%以上の事業成長を実現しました。
今回は、スタートアップ特有の開発課題とその解決方法、システム開発の取り組みについて、KAEN 代表取締役 川田さんにお話を伺いました。
BtoBセールスが抱えるギャップの解消へ
――まずは貴社の事業について教えてください。
川田さん:
私たちは、SaaS提供企業と販売代理店をつなぎ、効率的な商談機会を生み出すBtoBセールス・マーケティングプラットフォーム「TAAAN」を運営しています。
株式会社KAENは、「時代を変える産業に火をつける」をミッションに掲げ、新しい産業やサービスの発展を支える流通基盤の構築に挑戦しています。
従来のBtoBセールスでは、テレアポなどのアナログな手法が主流でした。しかし、SaaS企業の多くはWebマーケティングに注力しており、十分な営業リソースを確保できない課題を抱えています。一方、販売代理店も、取り扱い商材の制約や販売実績重視の評価制度によって、顧客ごとに最適な提案を行うことが難しいという問題があります。
そこで、TAAANは、SaaS提供企業と販売代理店の購買データをマッチングし、より確度の高い商談機会を創出する「完全成果報酬型」の商談創出プラットフォームとして展開。これまでにバックオフィス系SaaSをはじめ、HR、IoTなど多岐にわたる分野で成果を上げています。
今後も、優れたサービスが本当に必要としている人に届くよう、新しいセールスインフラの提供を通じて産業の発展に貢献していきます。
スモールスタートを実現した二段階開発
――Solashiに「TAAAN」の開発を依頼された背景を教えてください。
川田さん:
2020年4月のサービス立ち上げ時、私たちは、大規模な初期投資によるリスクを避けるため、自己資金で最小限の機能からスタートすることを選びました。一方で、将来の事業拡大を見据え、拡張性を重視したシステムを構築する必要がありました。
こうした制約の中で、私たちはSolashiを選びました。決め手は、オフショア開発でありながら、日本語での的確な要件定義が可能であり、日本のビジネス慣習にも精通していたことです。特に、フロント担当の島添さんは開発出身で、大企業やスタートアップでの豊富な経験を持っていたため、大きな安心感を得られました。
――具体的にはどのような支援を受けられましたか?
川田さん:
要件定義から、デザイン設計、バックエンド開発まで、システム開発の全工程を一貫してサポートしていただきました。開発は大きく2つのフェーズにわけて実施しました。
第1フェーズは2020年5月から1年間で、必要最小限の機能を持つシステムを構築。この時点ですでに運用保証も含まれていたのですが、私たちは「まずはプロダクトをリリースし、必要に応じて改良を加える」という姿勢で取り組みました。
その後、2020年9月にCTOが入社し、ユーザーから改善要望が増えたこともあり、2021年9月には第2フェーズとして、ほぼゼロから再構築する大規模な改修をお願いしました。
エンタープライズに耐えうる品質とスピードの両立
――システム開発において、とくに重視されたポイントを教えてください。
川田さん:
スタートアップ特有の課題は、「スピード」と「品質」のバランスです。私たちは、初期投資を抑えつつ、将来の拡張性を確保する必要がありました。
Solashiはこうした課題に対して、段階的な開発アプローチを提案してくれました。これは、必要最小限の機能を素早く実装し、その後のフィードバックをもとに機能を拡充していく、という方法です。これにより、初期投資を抑えつつ、成長に合わせて柔軟にシステムを進化させることができました。
――開発プロセスで印象に残っている点はありますか?
川田さん:
オフショアでありながら、スムーズな開発ができた点ですね。オフショア開発では、言語の壁や文化の違いが懸念されますが、Solashiのフロントのメンバーは日本語での対応が可能でした。また、ベトナム特有の商習慣に関しては島添さんのフォローがあったので、大きな問題にはなりませんでした。
また、要件定義の段階で、Solashi側から具体的な提案やアドバイスをいただけたことも非常に助かりましたね。私たちは事業のアイデアは持っていましたが、それを具体的なシステムとして実現する方法については、技術的な知見が必要でした。その点で、Solashiの経験にもとづいたアプローチは非常に心強かったです。
スタートアップの成長に欠かせないアジャイルな開発
――Solashiの開発による効果はいかがでしたか?
川田さん:
最も大きな効果は、上場企業でも安心して利用できるレベルのセキュリティと信頼性を確保できたことです。スタートアップのシステムでありながら、エンタープライズに認められる品質を実現できました。
また、開発プロセスも効率的でしたね。Solashiは明確なフォーマットと開発手法を持っていたため、要件定義に必要以上の時間をかけることなく、素早く開発に移行することができました。
スタートアップでは「まずはスピーディーにつくり、リリース後に改善する」という開発スタイルが求められます。Solashiはそのニーズに柔軟に対応していただけたため、事業としてのスピード感を維持できてよかったですね。
――予想外によかった点はありますか?
川田さん:
2022年7月にコアで関わっていたエンジニアが退職してしまいました。開発仕様を熟知している人材が社内にいなくなることは大きなリスクです。しかし、Solashiが開発側にいてくれたことで、こうした状況でもなんとか運用を継続できました。この間も、顧客からの新しい機能要望にも、柔軟に対応していただけたのは、とても心強かったです。
事業成長を支えるのは信頼できる開発パートナー
――現在の状況をお聞かせください。
川田さん:
現在は、社内のエンジニアが増えてきたこともあり、社内でシステムのリニューアルを進めている段階です。サービスも順調に成長しており、2年間で900%以上の成長を達成しています。Solashiに開発していただいたシステムは、まさにその成長の礎となったといえるでしょう。
――Solashiの開発パートナーとしての評価をお聞かせください。
川田さん:
Solashiの頼もしいところは、単なる開発ベンダーではなく、ビジネスパートナーとして私たちの成長をサポートしてくれたことです。とくに、立ち上げ期の開発では限られた予算のなかで最大限の価値を提供しようという姿勢が随所に見られました。
また、開発後のサポート体制も安心感がありましたね。システムの運用保守だけでなく、新たな機能追加にも柔軟に対応いただけました。
フェアに判断され、選ばれる世界の実現を目指して
――今後の展望をお聞かせください。
川田さん:
今後は、BtoBにおけるすべての流通網のオンライン化・資産化を目指しています。具体的には、Webマーケティングやテレアポ、顧問サービス、金融機関との連携を含めた総合的なプラットフォームを構築する計画です。このプラットフォームでは、GTM(Go-to-Market)戦略とHR、SaaSを組み合わせ、企業の事業成長を支援します。
そのなかでとくに重視しているのは、企業間のマッチングにかかるコストを最小化することです。私たちは「フェアに判断され、選ばれる世界」の実現を目指しています。そのためには、営業力だけでなくサービスの本質的な課題解決能力が評価されるための仕組みが必要です。
TAAANはそうしたBtoBの新たなプラットフォームになることを目指しています。Solashiに開発いただいたシステムは、私たちのビジョンを支える基盤となりました。