総合マーケティングカンパニーである株式会社unnameでは、KPIツリーを無料で作成できるツール「KPI Master」を2024年11月にリリースしました。リリースからわずか1ヶ月で400人以上のユーザーに利用されており、とくに経営層や部長クラスなどの、通常のマーケティング支援では接点を持ちにくい層からの利用が拡大しています。
なぜunnnameが、KPIツリーの作成に特化したプロダクトを開発したのか。今回は株式会社unname 代表取締役の宮脇さんに、KPI Masterの開発の経緯から今後の展望までお話を伺いました。
戦略立案から施策実行まで手掛ける総合マーケティングカンパニー
――まずは御社の事業概要と、KPI Master開発の背景についてお聞かせください。
宮脇さん:
当社は「総合マーケティングカンパニー」として、BtoBマーケティング支援を中心に事業を展開しています。単なる施策実行だけでなく、事業戦略やマーケティング戦略の立案から、組織作りまで一緒に取り組むプロジェクトが多いことが特徴です。
経営者や事業責任者の方々がカウンターパートとなることが多く、案件の獲得は簡単ではありませんが、一度お取引が始まると長期的なお付き合いになる傾向があります。
――具体的にどのような課題からKPI Masterの開発を思い立ったのでしょうか?
宮脇さん:
そこには、当社ならではの課題がありました。当初は「課題起点でマーケティング支援をする会社」という位置づけで事業を展開していましたが、具体的に何をやってくれる会社なのかお客様にはわかりづらい状態にありました。
そこで、認知・フロント商材となるツールを展開することで、ツールを通じて当社を知っていただき、本来のマーケティングコンサルにつなげようと考えました。この取り組みは2年前から始めており、ツールはマーケティングにおけるちょっとした課題を解決するものを目指しました。
お客様への支援の現場から生まれたツールのアイデア
ーーなぜKPIツリー作成に特化したツールを作ることに決めたのですか?
宮脇さん:
KPIツリーの作成は、マーケティングコンサルティングにあたって、多くのケースで必要とされますが、世の中にある既存のツールでは使い勝手に課題がありました。
KPIツリーは戦略を可視化する重要なフレームワークですが、利用頻度はそれほど高くないので、その作成に特化したツールというものがありませんでした。そのため、従来はPowerPointやExcelでKPIツリーを作成していました。しかし、これには指標が多くなると画面に収まらない、数値を変更する際に手作業で計算・修正しなければならない、といった点が問題になります。
そこでKPIツリーの作成に特化したツールがあれば、多くの人に利用していただけると考えたのです。
作成に当たって参考にしたのが、無料で使える某スケジュール調整ツールです。これも頻繁には使わないものの、必要なときに必ず使われ、無料なら多くの人が利用します。このように「必要なときに確実に使われるツール」という共通点があるため、KPIツリーの作成に特化したツールを開発すれば一定の需要が見込めると考えました。
――開発パートナーとしてSolashiを選ばれた理由と、開発プロセスについて教えてください。
宮脇さん:
2年前からツール開発を構想し、情報収集を進めていました。その中で、偶然ベトナムのIT飲み会に参加し、多くのベトナム企業がオフショア開発を行っていることを知りました。
システム開発は、ある程度の知識がないと品質を見極めるのが難しいと感じていたため、信頼できる会社を選ぶことが重要です。そこで、以前から経営メンターとして信頼していた島添さんが取締役を務めるSolashiに開発を依頼することに決めました。
ミニマムな機能に絞り込んで素早くリリース
――どのように開発に取り組んだのか教えてください。
宮脇さん:
企画やニーズの調査は2024年の1月ごろに始めました。最初はつくりたいツールのアイデアを島添さんに相談しながら、解決すべきユーザーの課題を明確にしていきました。
その後、10名ほどのユーザーにインタビューを行い、KPIツリーの使用シーンや課題を調査しました。しかし、インタビューだけでは本当のニーズをつかみきれないと感じたため、必要最低限の機能に絞って早期リリースする方針にしました。
現在のKPI Masterには、デザインの改良やチーム共有、エクスポート機能などの未実装部分が残っています。これらは、ユーザーからのフィードバックを基に、順次実装していく予定です。
――開発で苦労された点はありましたか?
宮脇さん:
オフショア開発でいわれるような言語の壁はほとんど感じませんでした。
苦労したのは、マーケティングの概念や背景を開発メンバーに理解してもらうことでしたね。ベトナムは高度経済成長期の日本のように、良いものをつくれば売れる時代であり、マーケティングの必要性があまり実感されていないのです。
そのため、なぜKPIツリーが必要なのか、どのように使われるのかといった背景の説明が必要でした。この際に、島添さんが文化的な通訳として間に入ってくれたのはとても助かりましたね。
実際の開発では、日本語が理解できるベトナム人スタッフとのやり取りしながら進めました。
リリース初期から狙った効果と予想以上の反響
――リリースからまだ1ヶ月ですが、状況はいかがでしょうか。
宮脇さん:
予想以上の反響があります。広告費をかけていないにもかかわらず、プレスリリースとXの投稿での拡散だけで、すでに400人以上の利用者を獲得できました。
そのなかで特にうれしいことが2つありました。1つは、50代の比較的年齢が高い方にも使っていただいていることです。通常のマーケティング支援では、20~30代の若いマーケティング担当者とやりとりすることが多いのですが、KPI Masterを通じて部長クラスや経営層にもアプローチできるようになりました。
2つ目は、同じ企業内で複数のユーザーが登録している点です。ユーザー登録時に所属企業を入力してもらうのですが、同じ会社から複数の登録があり、社内で口コミが広がっていることが分かりました。これはツールの有用性を示す良い指標だと考えています。
リリースから1ヶ月で狙っていたターゲット層にしっかりアプローチできており、大きな成果だと感じています。
――今後の展開についてお聞かせください。
宮脇さん:
今後は、KPI Masterと同じような、ミニマムなツールをいくつか開発する予定です。また、フロント商材となるほかのサービスも展開します。すでに第2弾として、AIによる記事作成サービス「爆速AIライティング」をリリースしたほか、近日中には研修サービスもスタートする予定です。
当社の強みは、事業戦略から実行支援まで一貫して提供できる点ですが、それを簡潔に伝えるのは難しいと感じています。こうしたツールを通じて、当社の考え方や支援内容を多くの方に知ってもらえればと思っています。