オフショア開発を成功させるためには、入念な準備が重要です。しかし、オフショア開発を検討している方の中には、どのように準備が必要かわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
入念な準備こそがオフショア開発の成功を左右する肝心の部分です。この記事では、オフショア開発の準備が重要な理由と、具体的な準備の進め方を7つのステップに分けてわかりやすく解説します。この記事を読めば、オフショア開発の準備に必要な知識が身につき、自信を持ってプロジェクトに臨めるようになるでしょう。
島添 彰
合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。
オフショア開発で準備が重要な理由
オフショア開発を成功させるためには、入念な準備が欠かせません。その理由として以下の3つが挙げられます。
- コミュニケーションの齟齬を防ぐため
- リスク・トラブルへの対策のため
- 計画通りにプロジェクトを進行するため
それぞれ詳しく解説していきます。
コミュニケーションの齟齬を防ぐため
オフショア開発では、言語や文化の異なる海外の開発会社とコミュニケーションを取ります。このような状況では、お互いの認識のズレから齟齬が生じやすくなります。
このような齟齬を防ぐためには、適切なコミュニケーション体制を整える必要があります。そのためには、事前準備の段階で以下の点を理解しておくことが重要です。
- オフショア開発会社とのコミュニケーションの取り方
- オフショア開発会社の開発体制
適切な事前準備をすることで、オフショア開発におけるコミュニケーションの齟齬を最小限に抑えられるでしょう。
リスク・トラブルへの対策のため
オフショア開発では、以下のようなリスクやトラブルが発生する可能性があります。
- 政情不安や為替変動による予期せぬ影響
- コストや納期のオーバー
- 機密情報の漏洩
これらのリスクやトラブルを回避するためには、次の2つの対策が重要です。
- 信頼できる開発会社の選定
- 契約内容の入念なチェック
準備段階から上記の対策を講じることで、オフショア開発におけるリスクを最小限に抑えられるでしょう。
計画通りにプロジェクトを進行するため
スムーズなプロジェクト進行には、入念な事前準備が極めて重要となります。特に途中の仕様変更や修正が難しいウォーターフォール開発では、計画の重要性がより高くなります。
準備が不十分であれば、当初の計画から逸脱し、予定外の工数や費用が発生する可能性が高まります。開発要件や体制を適切に検討しておかないと、手戻りやリソース浪費を招きかねません。
そのため、オフショア開発では、しっかりとした事前準備をすることが極めて重要になります。綿密な計画を立て、それに則ってプロジェクトを進行させることで、コストと品質を両立できます。
オフショア開発の準備7ステップ
ここからは具体的なオフショア開発の準備について、以下の7ステップで解説します。
- 社内のプロジェクトの担当者を決める
- オフショア開発での目標を明確にする
- オフショア開発について理解する
- 開発の体制を理解する
- 開発手法を理解する
- オフショア開発会社を選定・契約する
- プロジェクトを開始する
それぞれについて見ていきましょう。
1. 社内のプロジェクトの担当者を決める
オフショア開発の準備において、まず社内のプロジェクトチームまたは担当者を決定する必要があります。担当者は開発会社との連絡窓口として、以下のような役割を担います。
- プロジェクトの進捗管理や意思決定
- プロジェクトの目的や要件の明確化
- 社内の関連部署との調整
- 問題点の早期発見と解決
- 予算管理・品質管理
担当者は開発会社、社内関係者の連携を促し、プロジェクト目標の達成に向けて全体を牽引する役割を果たします。プロジェクトを円滑に進めるためには、これらの役割を適切に果たせる適任者を選ぶことが重要です。
2. オフショア開発での目標を明確にする
オフショア開発を成功させるためには、明確な目標設定が不可欠です。目標設定には、以下の2つの側面があります。
- 目的を明確にする
- システムの要件を決める
目的を明確にする
開発目的を明確にすることで、プロジェクトの方向性を定め、関係者の目的意識を統一できます。具体的には、次の点を明確にし、チーム内で共有することが大切です。
- 開発するシステムの内容
- 完成に向けたマイルストーンと期限
- オフショア開発に期待する効果(コスト削減、スピードアップなど)
期待される成果を具体的にイメージし、チーム全体で共有することが重要です。
システムの要件を決める
次に重要なのが、開発対象システムの要件を明確に定義することです。要件とは、そのシステムに求められる機能・性能のことを指します。要件が不明確では、期待する成果物を得られません。
委託先に要件を決めてもらうこともできますが、認識のズレを防ぐために、事前にイメージを固めておくことが重要です。要件を洗い出して整理することで、ヒアリングもスムーズになるでしょう。
3. オフショア開発について理解する
オフショア開発が初めての場合、オフショア開発について十分に理解しておくことが重要です。理解すべき主要なポイントは以下の通りです。
- オフショア開発とは
- オフショア開発でのコミュニケーション方法
- 国ごとの特徴
- コスト感
具体的に解説します。
オフショア開発とは
オフショア開発とは、海外の企業にシステムやアプリの開発を委託する開発手法です。国内での開発に比べ、人件費の安い海外の開発会社へ委託することで、コストを抑えながら品質の高いリソースを確保できるのが大きな特徴です。
オフショア開発を活用することで、自社に不足しているスキルや人材を補うことができ、開発スピードの向上や、高度な技術の獲得が期待できます。また、自社の開発チームが抱える業務負荷を軽減し、コア業務に集中することも可能です。
オフショア開発についてより深く知りたい場合は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:オフショア開発とは?基本知識やメリット、失敗しないための対策
オフショア開発でのコミュニケーション方法
オフショア開発では、電話、チャットツール、オンライン会議システムを活用して、開発会社とコミュニケーションを取ります。時差を考慮し、連絡手段や頻度、会議の形式などを事前に決めておくことが重要です。特に、以下の点を取り決めておく必要があります。
- 日報や週報の形式
- 問題発生時の連絡ルート
オフショア開発では、言葉の壁や文化の違いによる認識のズレが起こりやすいため、こまめなすり合わせが欠かせません。スムーズなプロジェクト進行のために、コミュニケーションルールを整備しておくことが重要です。
国ごとの特徴
一口にオフショア開発といっても、国ごとに特徴や強みは異なります。人件費の水準はもちろん、エンジニアの技術力や、時差など、様々な観点から国の特徴を理解しておきましょう。以下に、代表的なオフショア国についてまとめました。
国 | 人月単価 | 日本との時差 | 特徴 |
ベトナム | 40万円〜 | 2時間 | コストパフォーマンスがよい |
フィリピン | 30万円〜 | 1時間 | 英語が通じやすい |
インド | 50万円〜 | 3.5時間 | 技術力が高い |
バングラディシュ | 45万円〜 | 3時間 | フレッシュな人材が多い |
中国 | 50万円〜 | 1時間 | IT大国として技術力が高い |
ミャンマー | 27万円〜 | 2.5時間 | 勤勉な国民性 |
各国の特徴を把握した上で、自社に合った開発国を選ぶことが重要となります。コストだけでなく、総合的に判断することが求められるでしょう。
関連記事:オフショア開発の最新動向と人気国ランキング!上位7カ国の特徴
コスト感
オフショア開発の費用は、主にエンジニアの人件費が中心となりますが、それ以外にも様々な諸経費が発生します。主な経費は以下の通りです。
- エンジニアの人件費(人月×人月単価×開発期間)
- 設計費用
- ディレクション費用
- 運用・保守費用
- 諸経費(通信費・渡航費・宿泊費・交通費など)
オフショア開発を検討する際は、きちんとしたコスト見積もりと十分な検討が不可欠です。経費内訳を綿密に洗い出し、予期せぬコスト発生のリスクを最小限に抑えましょう。
オフショア開発の費用について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:オフショア開発の費用|国別の単価相場とコストを抑える方法
4.開発の体制を理解する
オフショア開発の体制は、大きく分けて「請負型」と「ラボ型」の2種類があります。それぞれの特徴について説明します。
請負型契約(開発)
請負型契約とは、決まった金額とスケジュールのもとで開発を進める方式です。開発の目的と成果物が明確で、納期が決まっているプロジェクトに適しています。
委託先に開発を一任するため、自社の管理工数を減らせるメリットがあります。反面、仕様変更への対応が難しく、柔軟性に欠けるというデメリットもあります。また、請け負った範囲以外の作業は、追加費用が発生する点にも注意が必要です。
請負型契約を選択する際は、成果物の定義を明確にし、契約書で詳細を取り決めることが重要です。
ラボ型契約(開発)
ラボ型契約とは、期間・人月ベースで契約を進める体制のことです。この体制は、スモールスタートで開発を始めたい場合などに適しています。自社の開発チームの一部として、継続的に開発を委託できるのが特徴です。
ラボ型契約では、仕様が決まっていない状態でも、柔軟に開発を進められるのが大きな特徴です。加えて、技術者とのコミュニケーションを密に取れるため、細かな仕様変更にも対応しやすくなります。
ただし、自社でマネジメントを担当する場合は、マネージャーの負荷が高くなる点には注意が必要です。オフショアチームを適切に統制し、プロジェクトゴールに向けて開発を主導できる体制を、社内に整備しておく必要があります。
関連記事:ラボ型開発とは?メリットとデメリット、請負型との違い
5.開発手法を理解する
代表的な開発手法として、「ウォーターフォール型」と「アジャイル型」の2つがあります。それぞれの特徴について説明します。
ウォーターフォール開発
ウォーターフォール型は、最初に全体の作業計画を決め、その計画に沿って開発を進める手法です。開発プロセスは、要件定義、設計、実装、テスト、リリースの順に進みます。
スケジュールが立てやすく、予算や進捗を管理しやすいのがメリットです。また、手順が明確なので、進捗状況の把握も容易です。ただし、計画に基づいて進行するため柔軟性が低く、途中で仕様変更が入ると対応が難しくなる点には注意しましょう。
このように、ウォーターフォール開発は事前に要件が固まっていて計画的な進行が求められるプロジェクトに適した手法です。
アジャイル開発
アジャイル開発は、開発を反復的に進め、フィードバックを受けながら柔軟に計画を変更していく手法です。必要に応じて要件の変更を織り込みながら、プロダクトを徐々に磨き上げていく点が大きな特徴です。
アジャイル開発の最大の強みは変化に強いことです。開発が始まってからも、要件の変更や環境の変化に柔軟に対応できるため、アジャイル開発はよく変更が予想されるプロジェクト向きと言えます。一方で、総工数や最終コストの見積もりが難しいデメリットがあります。
アジャイル開発は変化への対応に長けているため、新規事業の立ち上げなど、要件が流動的なプロジェクトに適した開発手法です。
関連記事:アジャイル開発とは?メリット・デメリット、進め方を詳しく解説
6.オフショア開発会社を選定・契約する
オフショア開発会社の選定と契約は、プロジェクトの成否を左右する重要なステップです。複数社から見積もりを取り、総合的に判断してベストな開発会社を選びましょう。
単に価格だけでなく、以下のような観点から開発会社を評価することが重要です。
- 過去の実績と開発事例
- 提案内容の質と適合性
- 技術力とエンジニアの能力
- 対応言語(日本語・英語対応の有無)
- 見積もりの適正さと透明性
- セキュリティ対策
開発会社が決まったら、具体的な契約内容について詰めていきます。開発範囲、納期、予算額などを書面で明確に定め、トラブル未然防止に努めましょう。また、機密保持契約(NDA)の締結は必須です。
オフショア開発会社の選定方法や注意点については、下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事:オフショア開発会社の選び方とは?選定の4ステップと失敗しないコツ
7.プロジェクトを開始する
開発会社との契約締結後、いよいよプロジェクトが開始となります。まずは、双方の認識をすり合わせるためのキックオフミーティングを実施し、要件定義や設計、開発へと進んでいきます。
プロジェクト開始後は、定期的な進捗報告会を実施し、問題があればすぐに対処できる体制を整えておくことが重要です。また、細かな変更点については都度コミュニケーションを取り、柔軟に対応していくことが求められます。
プロジェクトの進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
関連記事:オフショア開発の進め方8つのステップ!失敗を防ぐポイントも解説
オフショア開発なら準備から支援が可能なSolashiまでご相談を!
本記事では、オフショア開発の準備段階で重要となるポイントを詳しく解説しました。オフショア開発は、システム開発にかかるコストを大幅に削減しながら、高品質なリソースを活用できる有力な選択肢です。しかし、言語や文化、時差の違いによるリスクもあり、事前の十分な準備が必要不可欠となります。
- プロジェクトの目標を明確にし、オフショア開発について十分に理解を深める
- 開発体制や手法を適切に選択し、信頼できる開発会社を見つける
- 綿密なコミュニケーションと進捗管理の下、プロジェクトを進行する
これらの点を守り、段階的に準備を進めていくことが、オフショア開発の成功への鍵となります。
ベトナムでのオフショア開発に豊富な実績を持つ「Solashi Co., Ltd」では、お客様のビジネスニーズに合わせたきめ細やかなサポートを提供しています。優秀なエンジニアチームによる高品質な開発と、日本人スタッフによるスムーズなコミュニケーションで、お客様のプロジェクトを成功へと導きます。
まずは小さな相談からでもかまいません。これからオフショア開発を始めたいと考えている方は、ぜひ「Solashi Co., Ltd」までお問い合わせください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。