システム開発を検討している場合、準委任契約と請負契約のどちらで契約を結ぶべきか悩んでいる方もいるかもしれません。そこで本記事では、請負契約と準委任契約の違いや締結時のポイント、注意点などをわかりやすくご紹介します。記事の後半では、準委任契約が向いている具体的なシーンも解説します。
「システム開発を外部に委託する際、準委任契約を結ぶべきかどうかわからない」
「準委任契約を採用する予定だが、契約内容について不安を感じている」
このようなお悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。
システム開発の準委任契約とは
まずは、システム開発における準委任契約の基本を押さえましょう。ここでは準委任契約の概要を、以下の観点から解説します。
- 準委任契約は業務委託契約の一種
- 外注の契約形態の種類
- 準委任契約と請負契約との違い
準委任契約は業務委託契約の一種
準委任契約とは、業務委託契約の契約形態の一種です。自社で発生する業務の一部を、外部に委託する際に交わします。「委任」ではなく「準委任」であるのは、法律行為の代理や代行の依頼と区別されるためです。準委任契約では、事務や業務など事実行為のみを依頼できます。
外注の契約形態の種類
外注の契約形態の種類をまとめました。契約形態のうち、準委任契約の位置付けは以下の通りです。
契約の種類 | 報酬の対象 | 業務内容 | |
業務委託契約 | 請負契約 | 成果物の納品 | 成果物の納品 |
委任契約 | 業務の遂行or成果物の納品 | 法律行為 | |
準委任契約 | 法律行為以外 | ||
派遣契約 | 労働力 | 契約により異なる |
請負契約
請負契約は、ある特定の成果物の納品を目的とした契約です。成果物に対して報酬が発生するため、業務の遂行方法については開発会社の自由度が高くなります。最終的な納品結果に対して、開発会社は責任を負うことになります。
委任契約・準委任契約
受注者が法律行為をおこなう場合は「委任契約」、法律行為以外の業務をおこなう場合は「準委任契約」となります。委任契約や準委任契約の特徴は、成果物の提供よりも、行為の遂行そのものが重視される点です。
システム開発の準委任契約では、ラボ型開発やSES(システムエンジニアリングサービス)などが提供されます。
派遣契約
派遣会社の従業員が一定期間発注会社に派遣され、発注会社による指揮監督のもとで業務をおこなう契約です。専門性が求められる仕事や、短期間での業務量の増加に対応するために利用されることが多いようです。システム開発でも、派遣契約が締結されることがあります。
準委任契約と請負契約との違い
システム開発を外注する場合、準委任契約か請負契約のいずれかで契約を交わすのが一般的です。準委任契約と請負契約との大きな違いは、開発会社に課せられる義務が「業務の遂行」か「仕事の完成」かにあります。
請負契約では「仕事の完成」が絶対条件です。つまり、成果物が報酬の対象となり、開発会社は成果物に対する責任が生じます。
一方、準委任契約では、「業務の遂行」に対して報酬が支払われるのが特徴です。準委任契約でも、最終的に成果物の納品を報酬支払い条件とするケースは発生します。
しかし、契約の軸はあくまで業務遂行であるため、仕様変更や機能追加の余地があります。契約締結時に定めた通りの成果物を納品する請負契約とは、前提が異なります。特定の納品物を決まった期日に必ず納品してもらう必要があれば、請負契約を締結するほうがよいでしょう。反対に、柔軟な対応を望む場合は、準委任契約がおすすめです。
システム開発の準委任契約の種類
準委任契約は、以下の2種類に大きく分けられます。
- 履行割合型
- 成果完成型(成果報酬型)
型 | 報酬の支払い時期 | 完了義務 | |
業務委託契約 | 履行割合型 | 業務の遂行後 | なし |
成果完成型 | 成果物の納品後 | なし |
履行割合型は、リソースや労働時間を提供することで報酬が支払われます。一方、成果完成型は成果物の納品により報酬が発生するのが特徴です。いずれの場合も「業務を遂行すること」に対して契約を結ぶため、完了義務は生じません。それぞれを以下で詳しく解説します。
履行割合型
履行割合型は、遂行業務に対して報酬が生じる準委任契約です。成果物の有無や納品のタイミングに関わらず、提供人員や時間に応じて報酬が支払われることになります。
成果完成型(成果報酬型)
準委任契約の中でも、成果物が引き渡された時点で報酬が支払われる契約形態を指します。成果報酬型とよばれることもあります。成果完成型の準委任契約は、成果物の納品をもって報酬を支払う点で請負契約と同様ですが、完了義務は生じません。
システム開発における準委任契約のメリット3つ
ここからは、システム開発で準委任契約を結ぶメリットをご紹介します。
- 仕様変更に柔軟な対応ができる
- 必要なリソース確保できる
- 成果物の発生しない業務も依頼できる
1. 仕様変更に柔軟な対応ができる
準委任契約では、仕様変更があった場合も柔軟に対応してもらえます。
例えば請負契約では、成果物の内容と期日を定めて契約を交わします。そのため、締結後に開発中の案件に変更を加えられません。一方、準委任契約は業務の遂行に対して契約を交わすため、開発途中でも融通が利きます。
2. 必要なリソースを確保できる
準委任契約は、業務に必要なリソースの確保にも向いています。期間や稼働時間に応じた報酬を決めて契約するため、繁忙期のみ人員を確保するような利用も可能です。外部のリソースを活用すれば、新たに社員を雇う必要がありません。上手く活用できれば、コスト削減にもつなげられるでしょう。
3. 成果物の発生しない業務も依頼できる
成果物のない業務を依頼することが可能です。例えばシステムの保守・運用などは、具体的な成果を評価することが難しい業務です。しかし、履行割合型の準委任契約であれば、成果物のない業務にも柔軟に対応してもらえます。
システム開発における準委任契約のデメリット3つ
準委任契約にはさまざまなメリットがありますが、契約を結ぶ前にデメリットも押さえておきましょう。
- スケジュール遅延の可能性がある
- 発注会社による指揮命令は偽装請負になる
- 契約内容が曖昧になるリスクがある
それぞれを解説していきます。
1. スケジュール遅延の可能性がある
準委任契約で開発を依頼する場合、スケジュール遅延の可能性がある点には注意が必要です。準委任契約では、開発会社側に業務完了の義務が生じません。仮に予定していた納期を過ぎても、責任を問えないためです。
したがって、短納期のシステム開発や、スケジュールの遅延が許されない案件には向きません。ただし、このデメリットは高い柔軟性があることの裏返しでもあります。案件の内容やプロジェクトの状況に応じて優先すべき事項を整理し、適切な契約形態を検討しましょう。
2. 発注会社による指揮命令は偽装請負になる
準委任契約では、発注会社による指揮命令ができない点も押さえておきましょう。指揮命令とは、「労働者に対して、業務に関する事項を指揮監督し命令できる権利」のことです。
例えば、発注会社が開発会社や現場担当者に対して、作業方法や作業場所、作業時間などを指示するケースです。もし発注会社が上記のような指揮命令をした場合は偽装請負とみなされることがあります。
3. 契約内容が曖昧になるリスクがある
準委任契約は請負契約と異なり、成果物が絶対的な評価対象とはなりません。そのため、契約内容が曖昧になるリスクがあります。
内容が曖昧なまま契約を結ぶと、開発会社との認識齟齬が生じかねません。結果として業務遅延や報酬トラブルにつながる可能性があるため、締結前に内容を精査することが大切です。特に以下のポイントは、しっかり明確化したうえで契約を結ぶようにしましょう。
- 報酬の対象となる行為
- 契約の有効期限
システム開発で準委任契約が適しているケース
実際には、どのようなシーンで準委任契約が選ばれるのでしょうか。ここからは、システム開発で準委任契約がおすすめなケースをご紹介します。
- 複数の案件を依頼する場合
- 中小規模のプロジェクトの場合
- 仕様変更の可能性がある場合
それぞれを解説します。
複数の案件を依頼する場合
システム開発で複数の案件を依頼する場合、準委任契約が適しています。契約期間内は、自社のプロジェクトメンバーのような形で参加してもらえるためです。特に労働量に応じて報酬が決まる履行割合型は、複数の案件を依頼できるでしょう。
中小規模のプロジェクトの場合
中小規模のプロジェクトを進める場合も、準委任契約が向いています。高額の予算をかけられる大規模プロジェクトは、成果物に対する評価をおこなう請負契約で進めることが一般的です。
しかし、中小規模のプロジェクトは、請負契約では初期費用の調達が難しいケースもあるでしょう。準委任契約であればスモールスタートで段階的に機能追加や仕様変更ができるため、コストを押さえた開発が可能です。
仕様変更の可能性がある場合
開発途中で仕様変更が予想される場合、請負契約でプロジェクトを進めることは厳しいでしょう。請負契約では、契約の段階でどのような成果物を作るのかを固めます。仕様変更をするなら、別途契約する必要があります。
一方、準委任契約であれば、仕様変更にも柔軟に対応してもらえます。例えば、プロトタイプのリリースをしてから品質改善や機能拡張をおこなうなら、準委任契約がおすすめです。
システム開発で準委任契約を締結するときのポイント3つ
システム開発で準委任契約を締結するにあたって、押さえるべきポイントを解説します。
- 必要項目に抜け漏れがないか確認する
- 開発会社とすり合わせをおこなう
- テンプレートを活用する
それぞれを具体的に解説します。
1.必要項目に抜け漏れがないか確認する
必要項目に抜け漏れがないか、必ず確認しましょう。報酬や業務内容に関わる取り決めが明確に文書化されていないと、後々トラブルに発展する恐れがあります。
第三者が見てもわかりやすい内容にまとめて、適切な内容で締結しましょう。
<確認すべき項目の例>
- 業務の目的と内容
- 業務の遂行方法
- 契約期間
- 報酬の金額
- 支払い期間
- 禁止事項
- 秘密保持の詳細
- 知的財産の帰属
- 損害賠償の有無
- 解約する場合の通知方法と条件
開発会社とすり合わせをおこなう
契約書の内容が定まっていても、開発会社のメンバーが契約内容を理解していなければトラブルに発展する可能性があります。開発会社とのすり合わせの場を設けて、不明点や懸念を払拭した状態で契約を結ぶようにしましょう。
テンプレートを活用する
準委任契約書をはじめから作るのは手間がかかるうえ、定めるべき項目の抜け漏れも生じやすくなります。特にこだわりがない場合は、既存のテンプレートを使用しましょう。Web上に無料で利用できるテンプレートもあるので、ぜひご活用ください。自社にノウハウがない場合は、法律のプロに任せるのも一つです。
システム開発の準委任契約で注意すべき点
システム開発の準委任契約でもっとも注意すべきなのは、偽装請負です。偽装請負とは、「業務委託契約を結んでいるにもかかわらず、実態が労働者派遣と同様の状態となっていること」を指します。委託契約の形をとることで、主に労働者派遣法の適用を回避するためにおこなわれます。労働者派遣法では、派遣労働者に対して一定の保護が義務付けられています。
しかし、偽装請負の場合、労働者側はその保護の恩恵を受けられません。このことから、偽装請負には罰則が設けられています。仮に偽装請負とみなされた場合、法律で定められた罰則を受けるリスクがあります。くれぐれも注意しましょう。
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島添 彰
合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。