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技術ではなく事業の成長を見越して――EdvFutureが挑んだ12ヶ月のプロダクト開発

技術ではなく事業の成長を見越して――EdvFutureが挑んだ12ヶ月のプロダクト開発

技術ではなく事業の成長を見越して――EdvFutureが挑んだ12ヶ月のプロダクト開発

中学生や高校生の非認知能力の成長をサポートするSaaS「EdvPath」を提供する「EdvFuture」。専業のエンジニアがいない中、事業の成長に開発が追いつかない状況を打破すべく、Solashiへの委託に至りました。今回は「プロダクト開発で抱える課題をいかに乗り越えたのか」について、EdvFuture取締役の橋本さんと、CTOの野口さんにお話を伺います。

事業成長に開発速度が追いつかず外部委託

ーーまずはEdvFutureさまの事業概要からお聞かせください。

橋本さん:EdvFutureでは「未来ある子供たちの情報格差をなくして、自ら意思決定できる人を増やす」というミッションを掲げ、中学校や高校向けに生徒さんの成長支援をサポートする「EdvPath」というSaaSを展開しています。

近年、従来の「総合」の授業が「探求」へと置き換わりました。その評価には、いわゆる「非認知能力」という、目標に向かって頑張る力や人とうまく関わる力といった能力が指標とされます。生徒さん一人ひとりの非認知能力の測定が必要かつ、測定の効率化や測定結果を元にした能力向上のサポートが求められるようになりました。「EdvPath」では、偏差値だけではわからない個性や資質といった生徒さんの内面の状態を可視化・データ化することで、教育効果の測定や適切な生徒指導、学級運営を支援しています。現在、全国160の学校で導入されています。

ーー今回、Solashiによるオフショア開発を依頼されました。ご支援する前はどのような課題をお持ちだったのでしょうか。

橋本さん:経営的な視点では事業の成長スピードに対して、プロダクトの開発速度が追いつかない状況になっていたことが大きな課題でした。

野口さん:当時は専業のエンジニアがおらず、私も含めた3・4名のエンジニアは副業で関わっていました。そのため開発速度が上げづらいことに加え、局所ごとでしか関われないので品質にバラつきが出てしまっていたんです。限られた時間の中で、システム全体を俯瞰したうえでの最適化への対応も難しい状況でした。

このような経緯から開発を外部に委託することにしました。また当時は専業のPMもいない状況だったので、ゼロから10まで仕様を考えてお願いしないと開発できない企業への委託は難しいと考えていました。

高い技術力と深い事業理解に裏打ちされた安心感と信頼感が決め手に

ーーそのような中でどのようにしてSolashiへの委託に至ったのでしょうか。

橋本さん:エンジニアは売り手市場で採用が難しい状況です。そのため外部リソースを活用することになるのですが、オフショア開発企業の数は多いものの、企業ごとの質にはバラつきがあります。エンジニアの選定には慎重にならざるを得ません。そこでまずはリファラルで委託先を探して話を伺って、きちんとやってもらえそうな企業さんならやってもらうという感じで進めました。

Solashiの島添さんは同じ大学出身で年齢も一緒だったんです。なので大丈夫だろうと思っていました(笑)。商談の前に島添さんに事業の壁打ちをしてもらったのですが、そのときも真摯に話を聞いてくれましたし、エンジニア出身でCOOまでやられていたというところで安心感や信頼感を持ったのでお願いしました。

野口さん:はじめに島添さんが来てお話してくれたときに、こっちが聞いたことをしっかり汲み取ってくれたり、他の事例を示してくれたりしたんですね。島添さん自身ももともとエンジニアをやってこられた方なので、きちんとエンジニアリングのことをわかっている人がいることで、安心感につながったと思います。またエンジニア出身にもかかわらず、これだけきちんと営業ができるということで、島添さん個人にも魅力を感じました。

「発注者と受託者」ではなく1つのチームとして二人三脚で取り組めた

ーー実際にSolashiへ開発を委託してみていかがでしたか。

野口さん:こちらで仕様ややりたいことを7割程度伝えた上で、あとはSolashiさん側で噛み砕いてくれ、キャッチボールしながら開発が進められました。発注者と受託者という関係性でなく進められたことはよかったと思います。

「仕様書に書いてないからやってません」というスタンスの開発会社が多い中、私たちが足りないところを埋めてくれたり、先回りして取り組んでくれたりしました。またSolashiさんからも進め方の相談や提案をしていただき、キャッチボールしながら進められました。

私たちが持って然るべきような感覚を社外の人が持っていてくれているような状態だったので、Solashiのみなさんはみんないい人だなと感じましたね。優秀かついい人が揃っているから、そういう視点で仕事をしてもらえたんだと感じます。プロダクトは生き物みたいなものですが、こういう取り組み方をしてくれたことで、プロダクトにちゃんと血が入っていったのではないでしょうか。

橋本さん:開発会社との間では、どうしても発注者と受託者という関係になりがちです。これには発注側、受託側双方に問題があると思います。発注側は「発注してやっているんだ」という雰囲気を出すこともありますし、受託側は受け身になってしまう。そういう関係性では、一緒に二人三脚での開発はできないと思っています。

そういう中でSolashiさんは「こうしたらいいんじゃないか」という提案をしてくれるし、私たちからも提案できるというフラットな関係性が築けていました。加えて、私たちよりも島添さん自身が熱を持っていて、思いとしてのめり込んでいただいている感覚もありました。島添さんも大学で教育の研究をされていたと伺って、そういう思いが重なってプロダクトに熱を乗せていただいてるんだと感じました。

島添:教育に関しては、もっとよくできる余地があるというのを大学時代から感じていて、研究しながらモヤモヤして、一人でやることの限界を感じて民間に来ていたという経緯があります。そういう中でEdvFutureさんと出会ったことで、やっとモヤモヤを解決できるようなプロダクトに出会えたと思いましたね。なので、そのころの不完全燃焼で終わった自分の熱量を乗せて、あの時できなかったことを余すことなくやらせてもらっています。

十数年前に小学校にシステムを入れることもあり、そのときの情景も思い浮かべながら、必要な支援について具体的にイメージを膨らませていきました。普段から教育系の記事に目を通して、じんわりと考えながら思いを重ねていった感じです。

それからEdvFutureのみなさんもいい人たちで、ミーティングでも朗らかに笑いを交えながら受けてくださって。そういう中でも納期が厳しいとか、超えられない課題に対して一緒に取り組んでいただける感覚でした。私たちとしても「これがベストだと思う」「こうやって課題を解決したい」と伝えると、ちゃんと返してくれて、下請けとして見られてるんじゃなく対等なんだと思えた瞬間に、またチームとしてギアが入ったように感じましたね。

Solashiのプロダクトや事業の発展を見越した開発姿勢がよかった

ーーお話を伺っていると島添さんだけでなく、エンジニアメンバーにもプロダクトを改善しようという姿勢を感じられますが、なにか工夫したことはありますか。

島添:チームメンバーは優秀な大学を卒業している人が多いですが、ベトナムの教育水準は地域によっては高くありません。良い教育を受ける機会が限られる中で、どうしたら改善できるんだろうと考えながら取り組んでくれたのかもしれません。

プロジェクト初期には非認知能力やそれを仕事に応用する方法など、関連する話題について日常の会話の中で話したり、新しいメンバーには既存のメンバーから話題を振ったりしました。その中で、徐々にプロダクトに対する主体性が育まれていったと思います。納期間近で間に合わせないといけないときに、休日対応や残業もしようと歯を食いしばって対応できたのは、そういう主体性が影響しているのではないでしょうか。

野口さん:他の開発会社だと「休日も対応するなら超過で費用がかかる」という話からはじめがち。でもSolashiさんはちゃんと向き合ってくれますね。プロダクトの成長や納期のために頑張ってくれるというのは、他の企業にはない考え方やスタイルだと思います。

橋本さん:島添さんがミーティングに必ず入ってくれることも良かったと思います。ほとんどの開発企業では、現場メンバー同士で話し合って要件をやり取りして進めることが多いです。ただ、言語も文化も違う中で伝わったと思っても伝わっていないことがあって手直しが必要になるということが起こりがちです。Solashiさんとはそのようなコミュニケーションの齟齬がほとんどありませんでした。

それからSolashiさんはメンバーの離職率も低いです。ベトナムの市況を考えると仕方ない部分もありますが、同じメンバーが長くいてくれるだけで、長期的に安定して開発できるのはありがたいですね。

ーーその他Solashiへ委託してよかったと感じられる部分はありますか。

橋本さん:単なる開発会社というより、プロダクト開発会社という印象を受けました。「これを書いてくれ」とお願いして、ただ書いてくる開発もありますが、これは今ではChatGPTでできてしまいます。でもSolashiさんはそうではなくて、プロダクトや今後のことを考えて、こういう設計がいいのではないかと意見をくれます。

野口さん:よく技術組織でありがちなのは、熱量がプロダクトではなくコードやシステムといった技術に向くということ。熱量がプロダクトに向いていないと、その場しのぎの開発やタスクをこなすための開発になってしまいます。

開発を進める中では、技術的にこだわらないといけないところや、速度を優先すべきところ、汎用性を持たせるべきところなど、さまざまな判断が必要です。Solashiさんはプロダクトの発展や先を見越して、ちゃんと緩急つけて対応してくれます。それはコードを書いたら終わりではなく、プロダクトや事業のことをちゃんと見て開発してくれているからだと思います。

橋本さん:それでいうと、新機能開発を依頼すると時々「なんで作るんですか?それ必要ですか?」って聞かれます。またあるときは「これだけの機能を作るならちゃんと事業側で売上取ってくださいね」とSolashiさんからプレッシャーをかけられる不思議なシーンもありますが(笑)。

島添:「残業して頑張るぞ」とメンバーに言うときにも、残業の代わりに事業が伸びて、ユーザー数も増えてプロダクトの価値も証明できれば、メンバーのモチベーションにもなりますからね(笑)。

事業も組織もスケールさせる第2章もともに成長を

ーー最後に今後の展望をお聞かせください。

橋本さん:これまではアーリーアダプター層がメインユーザーで、あれもこれも最低限の中で闘ってきました。今後はキャズムを超えてアーリーマジョリティの層を取りに行くべく、より戦略性を持たせ、さらなる機能開発を進めたいです。それに伴って事業も組織もスケールさせるフェーズになります。事業スケールの瞬間も一緒に取り組んでもらえたらうれしいです。

橋本さん:それに伴ってEdvFutureとしてもエンジニアやPMをしっかり採用して、強い開発組織を作っていきたいです。そこでも埋まらないピースはSolashiさんと一緒に開発していきたいですし、プロダクトをスケールさせていく中で、一緒に成長できたらと思います。Solashiさんのことはこれまでの実績からも信頼しているので。

島添:第1章が終わり、これから第2章が始まるという印象です。これまでは少し属人的にやってきたところもありますが、今後は組織として動けるようマネジメントの強化が必要です。でもそのギアがきちんとはまることで、すごい開発速度になるのではないかと思うので、今はそのために整えていきたいと思います。第2章に向けてますます頑張っていきたいです。

島添 彰

合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。

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