国内のIT人材不足や開発コスト削減などの必要性から、海外でシステムやソフトウェアの開発をおこなう、オフショア開発が人気を集めています。
しかし、オフショア開発のメリットに魅力を感じてはいるものの、コミュニケーションがスムーズに取れるのか心配で導入に踏み切れない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、オフショア開発で起こるコミュニケーションロスの課題と原因をテーマにお届けします。
オフショア開発を成功に導くために、課題を解決する方法もご紹介します。
- オフショア開発に興味がある
- オフショア開発のコミュニケーション課題を詳しく知りたい
- オフショア開発で失敗しないためのコツが知りたい
このような関心をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。
オフショア開発でもっとも大きな課題はコミュニケーション
オフショア開発の現場では、コミュニケーションが大きな課題となっています。
「オフショア開発白書(2023年版)」の「オフショア開発を依頼した企業の実態調査(アンケート調査)」によれば、発注元がオフショア開発会社に感じた課題として、1位に「コミュニケーション力」、2位に「品質管理」が挙がっています。
出典:「オフショア開発白書」(2023年版)│オフショア開発.com」
「オフショア開発を成功させる上で何が一番重要か」との質問に対しても、「コミュニケーション」と答える会社が、圧倒的に多く見られました。スムーズなコミュニケーションが、システム開発の成否を分けるポイントであることがうかがえます。
出典:「オフショア開発白書」(2023年版)│オフショア開発.com」
オフショア開発は、海外の開発会社に発注をすればそれで完結するものではありません。
国内開発と同じく、もしくはそれ以上に、開発中のプロダクトのレビューやテスト、開発の進行状況を常に把握しつつ、あらゆるトラブルの発生にも対応する必要があります。
どの場面でも、コミュニケーションの行き違いがあれば、大きな問題に発展しやすくなります。
このようにコミュニケーションが、オフショア開発でもっとも大きな課題になっているのが現状です。
オフショア開発でコミュニケーションロスが招く4つの問題
コミュニケーションロスとは、コミュニケーションがうまくいかないことや不足することで起きる仕事上のミス・損失のことです。
オフショア開発では、日本と委託国の言語や文化、仕事の価値観、商習慣の違いからコミュニケーションロスが起こりやすい傾向にあります。
この章では、コミュニケーションロスが引き起こす代表的な4つの問題をご紹介します。
希望の要件・品質を満たないプロダクトが完成する
オフショア開発で起こるのが、希望の要件や品質を満たさないプロダクトが納品される問題です。
このような問題は、プロダクトの要件定義が不十分なまま開発が進んだり、発注側による指示が翻訳の過程で誤った内容に変換されたりした結果に起こりえます。
また、開発途中でのレビューやフィードバックが十分でないと、開発の方向性にズレが生じるケースも見受けられます。
明確に品質レベルや優先度を指定し、具体例を提示することが必要です。オフショア開発では、 日本人同士でのやり取り以上に丁寧さが求められます。
コミュニケーションを怠ると、想定したものとは異なる完成品が納品されることもあるので注意しましょう。
開発がブラックボックス化する
コミュニケーションロスにより、開発がブラックボックス化しやすくなります。
オフショア開発では基本的にリモートですべてが完結し、発注元が開発現場を実際に訪れる機会はあまりありません。
また時差の関係で、国によってはリアルタイムでのコミュニケーションが取りにくいケースもあります。
定期的なステータスチェックが実施しにくい状況が続くと、開発の実態がわからなくなるこかもしれません。
開発会社に委託することは、ある程度、現場のエンジニアに開発を委ねることを意味します。
しかし、コミュニケーションを取らずに放っておくと、「どこまで開発が進んでいるのかわからない」「品質の状態が掴めない」など進捗がわからない状況、いわゆるブラックボックス化に陥りやすくなります。
スケジュールが遅延する
スケジュール通りにプロジェクトが進まず、想定した納期に間に合わないのもオフショア開発ではよくある話です。
特に、日本語で出した指示が開発チームにうまく伝わらないことや、お互いの翻訳やメール・チャットの返信に時間がかかるのは、オフショア開発ならではの問題です。
日本と委託国の時差や祝日の違いにより、仕様変更やトラブルの対応が遅れ、予定よりもスケジュールが遅延することもありえます。
予算を超過する
当初想定した以上の予算が必要になることもあります。
予算を超過するのは。以下のようなケースが想定されます。
- 納品プロダクトが想定とは違い修正が必要になる
- テスト段階で多くのバグやエラーが発生し修正が必要になる
契約形態にもよりますが、追加の開発工数やエンジニアのリソース確保をするために、追加の開発コストをかけなければなりません。
その結果、最終的に国内で開発するよりもコストが高くなることもありえます。
プロジェクトの立ち上げ段階で、開発にかかるコストを明確にしていなかったり、予算のコミュニケーションを十分にできていないことが、こうした問題につながります。
とりわけ難易度の高いシステム開発や、新しい技術を導入するプロジェクトで、予算超過は起こりがちです。
オフショア開発でコミュニケーション課題が起きる原因4つ
オフショア開発では、なぜコミュニケーションロスが起きやすいのでしょうか。ここでは、代表的な4つの原因をご紹介します。
言語の壁による誤解やすれ違い
オフショア開発では、日本語を母語としないエンジニアに開発を依頼するため、言語の壁にぶつかることがあります。
実際のコミュニケーションの質は、担当者の言語レベルに左右されることが多いのが現実です。日本語独特の言い回しによって、相手に誤解を生み、齟齬が生じることもあります。
たとえば「そのあたり、うまくやっておいてください」のような指示は、日本ではよく使われます。ところが、オフショア開発国ではニュアンスが伝わらず、混乱を招く要因になるでしょう。
「なにを」「だれが」「いつまでに」「どのようにやる」のか具体的に伝えなければ、現場に理解してもらえず、意図したこととは違う対応になる可能性があります。
言語の壁による誤解やすれ違いが、スムーズな意思疎通をしにくい原因の一つです。
仕事に対する価値観の相違
日本とオフショア開発の委託国では、仕事に対する価値観の違いがあります。
ビジネスマナー、労働観の違いを理解せずに開発を委託すると、コミュニケーションエラーを引き起こす原因となることがあります。
たとえば、日本では納期の順守や緊急対応のために、サービス残業や休日出勤をすることがあるかもしれません。
しかし、海外ではそういった対応はあまり期待できないでしょう。
日本と比較すると仕事よりもプライベートを重視し、家族との時間を過ごすための予定を優先することも珍しくありません。
そうした違いを理解せずに日本人の価値観を押し付けてしまうと、開発メンバーの理解を得られず、仕事に対するモチベーションを下げる要因になるでしょう。
海外では日本の仕事の当たり前が通用しないことで、コミュニケーション上の課題が生じやすくなります。
タイムリーな連携の難しさ
オフショア開発では、リモート体制で開発がおこなわれるため、顔を合わせる機会が社内開発や日本国内でのアウトソーシングよりも少なくなります。
また、国によっては時差の関係で、リアルタイムでのコミュニケーションが困難です。即時のフィードバックや緊急時の意思疎通が遅れがちになります。
その結果、当日中に対応してもらいたいと思ったことが翌営業日以降になることもあるでしょう。タイムリーな連携の難しさにより、コミュニケーションエラーを引き起こします。
時差による勤務時間のずれを意識しつつ、余裕を持ったスケジュール設定を心がけることが大切です。
プロジェクトマネジメント体制の未整備
プロジェクトマネジメントの体制が整備されていないと、コミュニケーションロスが起きる原因になります。
プロジェクトマネジメントは、発注側がおこなうか、システム開発会社に任せることも可能です。
いずれにしても、プロジェクトマネジメントが万全でなければ、組織やチームがうまく機能しません。リソースの配置や進捗・タスク管理など、プロジェクト全体の進行が難しくなるからです。
プロジェクトマネジメントの体制を構築するには、適切な情報管理をおこなうコミュニケーションのマネジメントが必要です。
どのようなルールや方法で、情報を開示・共有するのかを定めておかなければ、開発チーム全体のコミュニケーションがうまく取れなくなるでしょう。
オフショア開発のコミュニケーションロスの解決方法5つ
オフショア開発とのミュニケーションロスを解決する方法を解説します、
コミュニケーションの問題はオフショア開発とは切り離せないものの、対策することで発生のリスクを軽減することは可能です。
具体的な5つの解決方法をご紹介します。
優秀な日本人PMを配置できる開発会社を選ぶ
PMとはProject Manager(プロジェクトマネジャー)の略で、依頼側と開発側の橋渡しを担当し、現地の開発メンバーを統括する重要な役職です。
開発側のエンジニアとのスムーズな意思疎通は、プロジェクトの成功を左右します。
しかし日本語対応ができるエンジニアの比率は、英語対応が可能なエンジニアに比べて圧倒的に低く、開発会社側の日本語対応はまだまだ難しいケースが多いのが現状です。
実際に「オフショア開発白書」(2023年版)によると、日本語で100%対応可能なエンジニア比率は11.1%、英語で100%対応可能なエンジニア比率は27.8%でした。
出典:「オフショア開発白書」(2023年版)│オフショア開発.com」
優秀な日本人PMを配置できる開発会社を選べば、開発要件の正確な伝達、的確な進捗管理、問題発生時の迅速な対応ができるようになります。
その結果、コミュニケーションロスによる品質低下やスケジュール遅延の問題も発生しにくくなります。
ベトナムオフショア開発会社の「Solashi Co., Ltd」では、優秀な日本人PMのアサインが可能です。事業立ち上げ経験のある担当者と、スムーズなコミュニケーションを取りながら、ご要望に沿った開発を進められます。
また、開発エンジニアやQAエンジニアを管理するディレクション業務も、すべてSolashi内で対応できます。オフショア開発にご興味のある方はぜひご相談ください。
正確でわかりやすい要求仕様書を作成する
要求仕様書とは、開発予定のシステムやソフトウェアに必要な要件や条件を明確に記述した文書のことです。
開発開始前に、以下のような項目を明確にして、要求仕様書にわかりやすく記載しておきましょう。
<要求仕様書に記載する項目>
- 開発したいWebサービスやアプリが持つべき機能・特性・特徴
- 現状の課題
- リリースの目的・ゴール
- 開発体制
- 開発スケジュール・予算 など
受注側・発注側で協議しながら認識のズレがないように要求仕様書を完成させると、プロジェクトがスムーズに進みます。
デザインや画面遷移などの仕様が具体的にわかるドキュメントや参考にしたいプロダクト・システム例なども用意すると、仕様面でのイメージ齟齬も起こりにくくなります。
時差の小さい国を選ぶ
開発国を選ぶ際には、時差の小さい国を選ぶとリアルタイムのコミュニケーションが取りやすくなります。
緊急時の対応や定期的な会議を実施しやすくなるため、開発国を選定する際はコストや人材だけでなく、時差も必ず考慮するようにしましょう。
主な開発国との時差は以下の通りです。
中国 | ベトナム | ミャンマー | バングラデシュ | インド |
1時間 | 2時間 | 2.5時間 | 3時間 | 3.5時間 |
特にベトナムは、時差2時間と比較的日本に近く、親日国であることや開発コストが安いことから人気の発注国となっています。
「オフショア開発白書(2023年版)」でも、国を指定してオフショア開発を検討している企業の多くはまずベトナムを検討しています。
※国の指定をしていない企業が全体の64%
出典:「オフショア開発白書」(2023年版)│オフショア開発.com」
ベトナムは国を挙げてIT人材の育成にも取り組んでいるため、以前は対応が難しかったAI・ブロックチェーンの先進テクノロジーや基幹システムなど、高度な案件にも対応できる会社が増えています。
詳しくは「オフショア開発ならベトナムが最適な理由8つと優良な会社の選び方」をご覧ください。
いずれにしても、時差の小さい国は連携が取りやすいのがメリットです。急なトラブルにも迅速に対応できるでしょう。
翻訳を念頭に置いた伝え方をする
日本側で作成したドキュメントや指示は、翻訳されることを前提に、端的・明確に記述するよう、心がけましょう。
日本語ではよくある二重否定や曖昧表現は伝わりづらく、誤解を招く可能性があります。
<二重否定の例>
- 不可能ではない
- 無関係ではない
<曖昧表現の例>
- 普通に
- いい感じに
- なんとかしておいて
また以下のような和製英語も、相手国側のSEやPMに理解されない場合があります。使用しないように注意しましょう。
<和製英語の例>
- コスパ(cost effective)
- SIer(system integrater)
- デバイス(device)
- コンピュータ(conputer)
- アンケート(questioner)
相手を尊重するための敬語表現も、翻訳に苦労することがあります。
「日本人相手だったら少しきつく聞こえるかもしれない」ような直接的な書き方・伝え方をするのも、曖昧さを減らすために有効な手段の一つです。
こまめにコミュニケーションをとる
開発側とのコミュニケーションを密にとることで、コミュニケーションロスを防げます。
チャットツールを使った日常的なコミュニケーションのほか、Zoom、Google MeetなどWeb会議ツールによる、オンラインのミーティングを定期的に実施しましょう。
ベトナムでオフショア開発会社を展開する、弊社「Solashi Co., Ltg」では、お客さまのご要望・環境に合わせたコミュニケーションツールを柔軟に選択していただいています。
SlackやMicrosoft Teamsなど、通常業務で使用されているツールを使って委託メンバーとやりとりができます。そのため、業務負荷を増やさずにこまめなコミュニケーションが実現可能です。
<Solashiで使用可能なコミュニケーションツール>
引用:弊社「会社概要_Web公開用」より抜粋
円滑なコミュニケーションによりオフショア開発を進めたい方は、ぜひ弊社までお問い合わせください。
円滑なコミュニケーションでオフショア開発を進めるならSolashiがおすすめ
コミュニケーションはオフショア開発の大きな課題の一つです。
言語の壁や仕事に対する価値観の違いから、品質や納期などのトラブルにつながるケースもあります。
円滑なコミュニケーションでオフショア開発を進めるなら、日本語でのコミュニケーションに強みのある開発会社を選びましょう。
「Solashi Co., Ltd」は設立以来、日本のお客さまのシステム開発を積極的に支援してきました。
優秀な日本人PMや、日本語を含む2ヶ国語以上の言語を扱うBrSEが対応します。はじめのご相談から納品まで、すべて日本語でのやり取りが可能です。
さらに弊社は、お客さまと一緒に、開発システムやサービスをより良いものにしていくことを信念としています。
開発開始時には、お客さまの目指すゴールをしっかりとお伺いします。プロジェクトメンバーのチームビルディングの際は、ゴールを繰り返し共有することを重視し、全員が案件を理解した状態で開発に携わります。
コミュニケーションを重視したシステム開発にご興味がある方は、弊社まで気軽にお問い合わせください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。