近年、オフショア開発の委託先の国としてベトナムが注目を集めています。ベトナムは、優れた技術力を持った優秀なエンジニアが豊富におり、日本よりも人件費が安いのが特徴です。オフショア開発を検討している人の中には、ベトナムのIT事情を詳しく知りたいという方も多いのではないでしょうか?
「ベトナムのIT事情を知りたい」
「ベトナムIT人材の魅力を知りたい」
そのような方に向けて、この記事ではベトナムのIT事情や強み、メリットについて解説します。オフショア開発の開発会社の選び方も解説しますので、オフショア開発を検討している方は参考にしてください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。
ベトナムのIT事情
近年、ベトナムは国家規模でITインフラの整備とデジタル化を加速させています。。ここでは、ベトナムのIT事情について下記の観点から詳しく解説します。
- IT産業の成長率
- IT人材の人口
- IT人材の育成
- IT業界の将来性
IT産業の成長率
「アメリカの国際貿易管理局のレポート」によると、ベトナムのIT産業は今後も高い成長を遂げると予測されています。2021年のベトナムのICT(情報通信技術)市場は約77億ドルでしたが、2027年には約170億ドルに達する見込みです。
ベトナム政府は政府機関全体のサービス向上を目的として、ICT技術の活用を推進しています。また、航空、医療、銀行、エネルギー、通信などの業界を中心に、民間企業でもICTソリューションの導入が進んでいます。
IT人材の人口
ベトナムのIT人材の数は2019年時点で約40万人となっており、特に若い世代が大部分を占めています。「TopDev」によると、20〜29歳の割合が全体の53.2%(約21万人)を占めており、30~34歳の割合は15.8%(約6万人)となっています。
この若年層の多さがベトナムIT業界の強みです。若手エンジニアは最新技術への適応力が高く、イノベーションを生み出しやすい傾向があります。また、若年層の厚さは長期的な人材供給の安定性を示唆しています。これらの要因から、ベトナムはIT産業の持続的成長と国際競争力の向上が期待できる有望な市場といえるでしょう。
(参照:TopDev│Vietnam IT Market Report 2023)
IT人材の育成
ベトナムでは、1998年に成立された教育法に基づき、小学3年生から英語やコンピューター教育が実施されています。政府は学校のデジタル化を推進しており、特にSTEM教育(科学、技術、工学、数学)に力を入れています。
その中で特に注目されているのが、ソフトウェア分野の教育です。ベトナムでは、中学2年生からソフトウェアコーディングやIT科目の授業がおこなわれています。IT教育を早期に実施していることが、多くのIT技術者を輩出している要因の一つです。
ベトナムの教育水準は国際的にも高く評価されています。OECD(経済協力開発機構)が実施するPISA(国際学習到達度調査)では、2015年にベトナムが世界で8位にランクインしました。特に科学と数学の分野では、韓国やアメリカといった先進国を上回る結果となっています。
IT業界の将来性
ベトナムでは、国内のデジタル化とDX化がさらに進展すると予測されています。2020年にはベトナム政府が「2025年までの国家デジタルトランスフォーメーション(DX)プログラムおよび2030年までの方針」を承認しました。この計画では、ベトナムが2030年までにDXの推進を強化することが示されています。
ベトナム政府は、これまでIT人材の育成に力を入れてきました。加えて、この新たな計画により国全体のデジタル化が加速し、行政や産業のIT化がより一層進むと予想されています。そのため、ベトナムは今後さらにデジタル技術の分野で国際的な競争力を高めていくでしょう。
ベトナムのIT人材のレベル・得意とする技術
ここでは、ベトナムのIT人材のスキルレベルや得意とする技術について解説します。
ITエンジニアの経験年数
べトナムのIT人材を知る指標として、経験年数を見てみましょう。先述の通り、ベトナムは若手のIT人材が豊富です。以下は日本のIT人材と比較したときの、経験年数の比較になります。
ベトナム | 日本 | |
3年未満 | 52.8% | 35% |
5年未満 | 16.5% | 10% |
10年未満 | 18% | 14% |
10年以上 | 12.7% | 39% |
出典:Vietnam IT Market Report Tech Hiring 2023 - TopDev
出典:エンジニア白書2022 (qiita.com)
ベトナムでは3年未満の若手エンジニアが半数以上を占め、新鮮な人材が豊富です。一方、日本は10年以上のベテランが4割近くを占めています。
ベトナムの若手中心のIT市場は、最新技術への適応力と将来性を示しています。急速に進化するIT業界において、革新的なソリューションを生み出す可能性を秘めているといえるでしょう。
得意とするプログラミング言語 ・フレームワーク
ベトナムのITエンジニアは、世界的に需要の高い言語やフレームワークを幅広く習得しています。主に使用されているプログラミング言語は下記のとおりです。
- JavaScript
- Java
- C#
- PHP
- Python
- Rubyなど
また、下記のフレームワークがよく使われています。
- React
- Spring Boot
- .NET Core
- Laravel
- Django
- Ruby on Rails
これらの言語やフレームワークは、日本のIT業界でも需要が高いものです。そのため、日本企業がベトナムの開発会社と協業する際、技術的なギャップが少なく、スムーズなプロジェクト進行が期待できます。
得意とするテクノロジー
ベトナムの教育機関や企業は、AIを活用した新しいソリューションの開発や研究を積極的に進めています。そのため、ベトナムのITエンジニアは、AIや機械学習、ブロックチェーン、データサイエンス、NFTなどの最新技術の活用も盛んです。
こうした最新技術は世界的に需要が多く、国際的な競争力を強化する目的で多くの企業が積極的に事業に取り入れています。
ベトナムがオフショア開発の委託先として人気を集めている5つの理由
近年、ベトナムはオフショア開発の委託先として人気を集めています。人気を集めている主な理由は、下記の5つです。
- エンジニアの人月単価が日本より安価
- コミュニケーションが取りやすい
- 優秀な人材が豊富
- インフラ環境が安定している
- 日本との時差が少ない
それぞれの理由を詳しく解説します。
1.エンジニアの人月単価が日本より安価
ベトナムは日本に比べて賃金水準が低いという特徴があります。日本の1/2から1/3程度の単価で優秀なエンジニアを雇用できるため、開発コストの削減が可能です。この価格競争力は、ベトナムがオフショア開発先として注目を集める主な理由の一つです。
ただし、コスト削減効果を最大限に活かすには、適切なコミュニケーション体制の構築が不可欠です。言語や文化の違いを克服し、円滑なプロジェクト進行を実現するには、ブリッジSEの配置など、追加のコストが発生する可能性があることに注意が必要です。しかし、全体としては依然として大きなコストメリットが得られるため、ベトナムは魅力的なオフショア開発先といえるでしょう。
2.コミュニケーションが取りやすい
ベトナムは、他の東南アジア諸国と比べて日本語人材が豊富です。2021年度のJASSO調査によると、日本の留学生全体の20.4%をベトナム人が占めています。また、ベトナムは日本語学習者が多い国としても知られています。
(参照:2021(令和3)年度外国人留学生在籍状況調査結果│独立行政法人日本学生支援機構(JASSO))
この特徴は、IT業界においても大きな利点となります。日本語でのコミュニケーションが可能な人材は、プロジェクトの成功に不可欠な要素です。ベトナムの日本語人材の豊富さは、オフショア開発における重要な強みとなっています。
弊社「Solashi Co., Ltd」は、多数の日本人スタッフにくわえ、ビジネスレベルの日本語が話せるベトナムエンジニアが多数在籍しています。また、ブリッジSEが言語や文化の違いによるトラブルを防ぎ、円滑なコミュニケーションを実現します。ベトナムでのオフショア開発に興味をお持ちの方は、ぜひ当社にお問い合わせください。
3.優秀な人材が豊富
ベトナムのIT人材市場の特徴は、高度なスキルを持つエンジニアの豊富さにあります。政府主導のICT教育推進策により、質の高い人材が継続的に輩出されています。この教育体制は、ベトナムIT業界の長期的な成長と競争力強化につながっているのです。
また、ベトナムの教育水準の高さは国際的にも認められています。2015年のOECD生徒の学習到達度調査(PISA)では、ベトナムが科学的リテラシーの分野で8位にランクインしました。これは、ベトナムの若い世代が高い問題解決能力と論理的思考力を持っていることを示しています。
(参照:OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント│文部科学省・国立教育政策研究所)
4.インフラ環境が安定している
ベトナムの人気が高まっている理由の一つに、安定したインフラ環境があります。近年、ベトナム政府は情報通信、道路、治水などのインフラ整備に注力しています。特に、IT産業に欠かせない通信インフラの改善が顕著です。
光回線の普及により、インターネット接続の安定性と速度が大幅に向上しました。これにより、以下のメリットが生まれています。
- リモートワークの効率化:安定した高速回線で、ビデオ会議やファイル共有がスムーズに行えます。
- リアルタイムコミュニケーション:日本企業とベトナムの開発チーム間で、遅延の少ない迅速な情報交換が可能です。
- システム開発・運用の安定性:高品質なインターネット環境により、開発作業やシステム運用時のトラブルリスクが低減されます。
これらの要因により、日本企業はベトナムの開発会社に安心してプロジェクトを委託できる環境が整っています。インフラの安定性は、オフショア開発の成功に不可欠な要素となっているのです。
5.日本との時差が少ない
ベトナムと日本の時差はわずか2時間で、就業時間が大きく重なっています。時差が小さいため、リアルタイムでのコミュニケーションが容易になり、プロジェクトの進行や意思決定を迅速に行えます。
たとえば、開発中に問題が発生したり仕様変更が必要になったりしても、すぐに話し合いを持ち、即座に対応可能です。一方、時差が大きい国との開発では、連絡の遅れが意思決定や対応を遅らせる可能性があります。
ベトナムとの開発では、こうしたリスクを最小限に抑えられるため、プロジェクトの効率的な進行が期待できるでしょう。
ベトナムのオフショア開発会社を選ぶポイント
ベトナムのオフショア開発会社を選ぶ際には、下記のポイントを確認しましょう。
- 開発実績が豊富
- ブリッジSEのスキルレベル・言語力
- コミュニケーションのとりやすさ
- 提案力
それぞれのポイントを解説します。
開発実績が豊富
オフショア開発会社を選定する際は、オフショア開発会社の過去の開発実績や得意分野などを確認しましょう。開発実績が豊富な会社は、技術力や課題解決能力、リスク管理などの面で豊富な知見を持っていると考えられます。また、さまざまな技術的な課題に直面してきた経験があるため、予期せぬ技術的なトラブルや仕様変更にも柔軟に対応してもらうことも可能です。
開発会社の実績は、ウェブサイトやポートフォリオで公開されています。まずは開発を依頼したい会社のウェブサイトを確認してみましょう。ポートフォリオを確認することで、自社のニーズに合った技術力や実績を持っているかどうかを判断できるでしょう。
ブリッジSEのスキルレベル・言語力
オフショア開発を円滑に進めるためにブリッジSEのスキルレベル・言語力も必ず確認しましょう。特に、ブリッジSEの実績や担当したプロジェクト、得意分野、日本語やベトナム語のレベル、などを事前に確認することが重要です。
日本とベトナムでは、ビジネスにおけるコミュニケーションのスタイルや働き方に違いがあります。オフショア開発では、双方の文化の違いを理解し、お互いが協力し合う体制を構築することが重要です。また、システムの要件を正確に伝えられないと、誤解やミスが生じ、プロジェクトが遅延したり、成果物の品質に影響を与えたりする可能性が高くなります。
両国の文化や商習慣を理解し、スキル・言語力に優れたブリッジSEがいれば、オフショア開発をより円滑に進められます。
コミュニケーションのとりやすさ
コミュニケーションの円滑さはプロジェクトの進行に直結します。まず、日本語でのやり取りがスムーズかどうかを確認しましょう。また、メールの返信速度や質問への回答の的確さも重要な指標です。
さらに、使用するコミュニケーションツールや定期的なミーティング、進捗報告の体制が整っているかも確認しましょう。具体的で分かりやすい説明ができるか、専門用語を適切に解説してくれるかも重要です。これらの点を押さえることで、プロジェクトへの熱意や対応力を把握できます。
コミュニケーションが円滑な開発会社を選ぶことで、フィードバックの反映がスムーズになり、プロジェクトの成功率が高まります。
提案力
オフショア開発会社を選ぶ際、その提案力は重要な判断基準です。優れた提案力を持つ開発会社は、以下のような特徴を備えています。
- ビジネスの目標や課題を深く理解し、適切な開発方法を提案できる
- 仕様、必要な機能、運用方法などを積極的に提案できる
- システムの要件に応じた最適な技術やフレームワークを提案できる
特にオフショア開発の経験が少ない企業にとって、提案力のある開発会社の存在は心強い味方となります。システム開発の進め方や注意点が不明確な場合でも、適切なサポートが受けられるでしょう。
提案力のある開発会社を選ぶことで、単なる指示通りの開発ではなく、ビジネスの成功に直結する効果的なシステム開発が可能になります。
ベトナムのIT企業にオフショア開発を依頼するなら「Solashi」まで
この記事では、ベトナムのIT事情とオフショア開発の利点、そして開発会社の選び方について詳しく解説しました。ベトナムは豊富な若手IT人材、日本との近い時差、コスト効率の良さなど、オフショア開発に適した特徴があります。しかし、これらの利点を最大限に活かすには、適切な開発会社を選ぶことが極めて重要です。コミュニケーション力、技術力、提案力など、多角的な視点から開発会社を評価し、自社のニーズに合ったパートナーを見つけましょう。
「Solashi Co., Ltd」は、ベトナムを拠点とする信頼できるオフショア開発会社です。以下の特徴により、お客様のプロジェクトを成功に導きます。
- 事業視点からの開発:お客様のビジネスゴールを深く理解し、最適な開発プロセスを提案します。
- 段階的アプローチ:Short Project、MVP開発、本開発と段階を踏み、リスクを最小限に抑えます。
- 柔軟な対応:ラボ型契約により、プロジェクト途中での変更にも柔軟に対応します。
- 日本語対応:技術に精通した日本人PMとビジネスレベルの日本語力を持つスタッフが在籍しています。
- 豊富な実績:様々な業界での開発経験を活かし、質の高いソリューションを提供します。
オフショア開発でお悩みの方は、ぜひ「Solashi Co., Ltd」にご相談ください。お客様の事業成功に向けて、最適なIT開発ソリューションを提供いたします。
島添 彰
合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。