ラボ型開発は、オフショア開発で用いられる手法の一つです。ラボ型開発を聞いたことがあっても、中身はよくわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ラボ型開発の基本を解説します。ラボ型開発のメリット・デメリット、請負型開発との違い、適している案件内容などをわかりやすく説明します。
オフショア開発を検討していて、ラボ型開発を詳しく知りたい方はぜひ最後までお読みください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。
ラボ型開発とは?
ラボ型開発とは、発注元が委託した開発業務を、受注先の開発会社でおこなう際にとられる開発方式の一種です。
一定期間(約半年~1年間)の業務遂行に対して契約が締結されます。オフショア開発でもよく用いられており、契約形態は準委任契約に分類されます。
開発会社に課されるのは業務をおこなうことで、納品物の完成が報酬対象となるものではありません。発注側の担当者は、開発会社のブリッジSEやPMとコミュニケーションをとりながら開発を進められます。
ラボ型開発は、アジャイルモデルでの実施が適していると考えられています。
アジャイルモデルとは、各機能ごとに「計画→設計→実装→テスト」の工程に取り組み、少しずつ開発を進める開発方式です。
案件全体の詳細が決定するのを待たずに、要件・仕様が決まった箇所から開発に着手できるという特徴があります。
ラボ型開発のメリット6つ
ラボ型開発の代表的なメリットを6つ紹介します。
- IT人材のリソースを一定期間確保できる
- コスト削減につながる
- システム開発のノウハウを蓄積できる
- 仕様変更に柔軟な対応ができる
- スピード感をもって開発を進められる
- スモールスタートができる
具体的な内容を説明します。
IT人材のリソースを一定期間確保できる
ラボ型開発は、IT人材を自社専属のチームとして一定期間確保できます。
成果物ではなく、期間・人月の労働力をベースにして契約をおこなうからです。基本的に契約中のチームメンバーは変わらないため、情報共有も円滑に進められます。
契約期間中、安定した開発体制を構築できるでしょう。
コスト削減につながる
コスト削減につながる点もメリットの一つです。
ラボ型開発では、期間を調整することで対応するため、都度見積もりは発生しません。編成するIT人材の人数と期間を決めて契約をおこないます。
後述する請負型開発では、こういった費用が別途必要です。また、日本のシステム開発会社に依頼をすると、大きなコストが発生します。
弊社「Solashi Co., Ltd」は、ベトナムでオフショア開発会社を運営しておりますが、ラボ型開発にも対応しています。日本の開発会社と、弊社のラボ型開発のコストを比較してみましょう。
▼日本の開発会社に外注
開発期間:3カ月
雇用人数:2名
コスト:約540万円
▼「Solashi Co., Ltd」のラボ型開発
開発期間:3カ月
雇用人数:5名+シニアメンバーによるサポートあり
コスト:約404万円
(参照:弊社の会社概要より抜粋)
このように、日本国内で開発を進めるよりも低コストで充実した開発環境を整えられます。さらに、充実した人員体制を構築できるのも魅力です。
具体的なラボ型開発のお見積りをご希望の方は、「Solashi Co., Ltd」までお問い合わせください。
システム開発のノウハウを蓄積できる
ラボ型開発を導入すると、上流工程から下流工程まで、システム開発に必要なノウハウを蓄積できます。
「発注側の提示したものを完成させる」ことが主となる請負型では、要件をすり合わせた後の工程は開発会社に一任されることが多くなります。
一方、ラボ型では発注側・開発会社が相談しながら開発を進めていく性格が強いため、発注側でも開発に関わるノウハウを得る機会も多くなります。
たとえば、以下のようなスキルと知識が蓄えられます。
- 要件定義の効率的な進め方
- 品質を高める基本設計のアウトプット・詳細設計のインプット
- ベロシティ(開発チームの進行速度・作業量)の向上
- 技術スタック(プログラミング言語・フレームワーク・ライブラリ・ツールの組み合わせ)の刷新
- 効果的なチームビルディング
このようなノウハウを蓄積することで、開発スピードのアップや生産性の向上などが期待できます。新しいプロジェクトを立ち上げる際にも、かかる工数を大幅に削減可能です。
仕様変更に柔軟な対応ができる
ラボ型開発なら、仕様変更や機能の修正が発生しても臨機応変に対応できます。なぜなら、契約期間内であれば自由にIT人材のリソースを活用できるからです。
「Solashi Co., Ltd」では仕様変更以外でも柔軟な対応が可能です。システム開発をしながら、進行中の開発とは性質の異なる以下のような幅広いタスクを受けつけています。
- オウンドメディアの構築
- フレームワークのバージョンアップ
システム開発とともに、事業の拡大を全力でサポートさせていただきます。
スピード感をもって開発を進められる
スピーディーにプロジェクトを進められることも、ラボ型開発のメリットです。決められた開発要件に対応できるチームを編成できれば、開発に早く取りかかれる体制が作れます。
請負型開発では要件が定義されないと見積もりを出せず開発に進めません。ラボ型開発ではアジャイルモデルを採用することで、すべての要件・仕様決定を待たずに局所的な開発を進められるため、スピーディーです。
「Solashi Co., Ltd」では、業務を効率化するためにさまざまな提案をおこないます。提案させていただいたサービスやフレームワークによって、プロジェクトを迅速に進めることが可能です。
エンジニアの工数は可能な限り開発に当て、品質管理は専門知識のあるQAが案件の進行と並行して業務をするため、スピードだけでなく高い品質も実現できます。
スモールスタートができる
ラボ型開発なら、プロジェクトをスモールスタートできます。期間や人月ベースの契約であることから、発注側の要望に合わせてリソースを適宜調整できるからです。
低いコストで試作品を開発し、様子を確認しながら事業を進めていくリーンスタートアップを活用できます。
「Solashi Co., Ltd」も、リーンスタートアップを取り入れた提案が可能です。コストを抑えながら次の課題を見つけていけるため、新規サービスのリリースに適しています。
ラボ型開発のデメリット3つ
ラボ型開発には、メリットだけではなくデメリットも存在します。
デメリットを理解しておくことで、今後ラボ型開発を導入するにあたって失敗の少ない運用が可能になるでしょう。
主なデメリットを3つ紹介するので、参考にしてください。
一定のタスク量がなければコスト高になる
ラボ型開発では契約期間中にIT人材を確保しておくため、一定量のタスクを発注しなければ逆に損をする恐れがあります。
タスク量が少なくても、契約期間中に支払う費用は変わらないからです。あらかじめ発注計画を立てておかないと、コストパフォーマンスが悪くなるかもしれません。
ただし、オフショア開発会社によっては、チームの人数の変更ができることもあります。その場合、適宜調整をすることで、コストを抑えることが可能です。
開発のチームビルディングに時間を要する
発注側がディレクターやPMとなって開発を主導する場合、開発チームの構築に時間がかかることはチームラボ型開発のデメリットです。
プロジェクトや自社文化に適したメンバーの選定、開発指示、メンバーへの情報共有など、事前準備を発注側の担当者は実施しなければなりません。
ケースによって違いはありますが、チームビルディング~開発開始までには2週間から数カ月ほどの期間を要します。プロジェクトのスケジュールに余裕を持たせることが大切です。
開発会社側がディレクターやPMを担いメンバー選定や業務管理をおこなう委託先を選ぶことで、こうした負担は軽減されます。
マネジメント業務が負担になることもある
ラボ型開発では、発注側のマネジメント業務の負担が増大しがちです。
特に、ディレクターやPMを務める場合に顕著になります。担当者は、チームの各メンバーと直接やり取りをしながらプロジェクトを進めなければならないからです。
マネジメント業務の具体例は、以下の通りです。
- 品質確認
- 進捗の把握
- 業務指示
自社専属の開発チームを持てることはメリットですが、そのチームをマネジメントするための負荷がかかることも理解しておきましょう。
このデメリットも、開発と業務管理を兼任してくれる開発会社に依頼することでカバーできます。
ラボ型開発(準委任契約)と請負型開発との違い
オフショア開発では、ラボ型開発のほかに請負型開発もおこなわれています。
各開発方式で、どのような違いがあるのでしょうか。
ラボ型契約は準委任契約のため、開発会社(受注側)に業務の遂行が課せられています。一方の請負型開発では、納品物を完成させる義務があります。
ラボ型開発:発注側が指定した一定の期間・人材を発注側が確保し、開発業務をおこなう
請負型開発:発注側が指定した納期や仕様に沿って受注側が納品物を完成させる
ラボ型開発と請負型開発の主な違いを、以下の表にまとめました。
ラボ型開発 | 請負型開発 | |
契約形態 | 準委任契約 | 請負契約 |
契約期間 | 発注側が指定した期間中 | 発注側が指定した納品日まで |
責任範囲 | 業務遂行 | 納品物の完成 |
開発モデル | アジャイル・ウォーターフォール | ウォーターフォール |
開発体制 | 発注側と受注側が合意して決める | 受注側が決める |
※ケースによって例外もあり
ウォーターフォールモデルとは、要件定義からテストまでの各工程を順番に実施する開発方式のことです。
現行の工程が完了しないうちは次の工程に移行できないため、まずは全体の要件・仕様を決定する必要があります。
納品物の完成が必須となる請負型開発も、要件や仕様を固めていることが前提となります。要件や仕様が不明瞭では完成に至るまでのリソースを算出できず、見積もりが出せないからです。
したがって、要件が未確定でも開発を進めたい場合には、多くのケースでアジャイルモデルを用いたラボ型開発が採用されます。
ラボ型開発に適した3つのケース
どのような案件が、ラボ型開発に向いているのか解説します。自社が抱える案件とマッチする場合は、ラボ型開発での委託を検討してみてはいかがでしょうか。
仕様変更が発生する案件
機能の追加・修正をはじめとした多くの仕様変更が予想される案件は、ラボ型開発に向いています。
ラボ型開発では、都度見積もりをすることはありません。ただし開発期間を調整することで、対応が可能です。契約時点で仕様の方向性が固まっていない案件も適しているでしょう。
請負型の場合は、仕様変更のたびに追加費用や見積もりが発生します。柔軟な開発体制を構築したいなら、ラボ型開発が最適です。
定期的な発注が発生する案件
発注したいタスクが定期的に発生する場合も、ラボ型開発に適しています。契約期間中はIT人材を確保でき、チームを再編成する手間が省けるからです。
すでにアプリやWebサービスを運用しており、追加機能の実装・修正やバグ対応が必要なケースも向いているでしょう。
IT投資を最適化させたい案件
ラボ型開発は、IT投資の最適化に適しています。
IT投資の最適化とは、プロジェクトのフェーズに合った規模で、適切な開発費用をかけて開発することです。
例えば、サービスイン初期から、すべてをシステム化することは、初期費用が増加し、将来の変更に柔軟に対応できなくなることがあります。それを防ぐには、プロジェクトを適切なサイズに切り出して、柔軟に開発ができるラボ型開発が向いています。
「Solashi Co., Ltd」が重視するのは、初期段階から多額の投資をおこないすぎないことです。
弊社のお客様で、スタートアップの会社や新規事業を立ち上げられる方のほとんどは、リリースを優先するため仕様書ではなく、プロトタイプのリリースをしてから品質改善・機能拡張をおこなっています。
ラボ型開発により、適切な投資を続け、後戻りできないビジネスの失敗を防止することが可能です。IT投資の最適化を進めることで、中長期的なプロジェクトの成功に向けてサポートいたします。
ラボ型開発を依頼する際の注意点2つ
発注側は、依頼するのに適した開発会社を選ぶ必要があります。
どのような会社に依頼するかによって、プロジェクトが成功するかが変わってくるでしょう。効果を得やすい会社を見つけるために、注意点を2つ紹介します。
コミュニケーションがとりやすい体制か確認する
ラボ型開発で発注側が業務管理や現場指示をするには、チームメンバーとスムーズにコミュニケーションをとれる体制が重要となります。
発注側の担当者と開発会社が問題なくやり取りを進められると、開発の品質が高まりやすいからです。
ミーティングの回数や、コミュニケーションツールの種類を確認しておくことをおすすめします。なお、日本語や英語の使用レベルもチェックしておくといいでしょう。
「Solashi Co., Ltd」では、以下のコミュニケーションツールを使用していますz。お客さまのご要望、環境に合わせてコミュニケーションツールを柔軟に選択可能です。
(参照:弊社の会社概要より抜粋)
ラボ型開発の実績が豊富な会社を選ぶ
ラボ型開発を得意とする開発会社を選ぶと、プロジェクトを円滑に進められるでしょう。これまでの実績を通して得た、開発手順や課題解決策などのノウハウが社内に蓄積されているからです。
請負型開発の経験は豊富であるのに、ラボ型開発の実績がない会社もあるかもしれません。会社の公式サイトをチェックし、ラボ型開発の実績が掲載されているか確認しましょう。
さらに自社と同じ業界・業種の実績がある場合は、専門的な事象や用語への理解がすでにあることから、より高品質な開発を期待できます。
ラボ型開発を依頼するならSolashiにおまかせ
「Solashi Co., Ltd」なら、プロジェクトの価値を創出するラボ型開発を実現できます。
ラボ型開発の実績が豊富で、円滑にプロジェクトを進めるための体制が整っています。必要最小機能でリリースするスモールスタートも可能なので、無駄なコストを削減できるでしょう。
ハノイ工科大学、ベトナム国家大学、貿易大学など、トップ校出身者がそろっています。加えて、高い技術レベルで議論ができる日本人PMも在籍しています。
ラボ型開発で結果を出したいなら、ぜひ弊社にご相談ください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。