「システム開発でトラブルが起こらないか心配」
「トラブルなくシステム開発を進めるためには、どのような対策をすればよい?」
「委託しているシステム開発に問題があるので、対処法が知りたい」
システム開発プロジェクトを進める中で、多くの企業が様々なトラブルに直面します。そのため、事前の対策と、発生時の対処法を理解しておくのは非常に大切です。
本記事では、システム開発でよく見られるトラブルの主な要因を分析し、その対策方法を詳しく解説します。後半では、トラブルを未然に防ぐための具体的な方策をまとめ、円滑なシステム開発の実現に向けたヒントを提供します。ぜひ最後までご覧ください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。
システム開発でトラブルが起きる原因
まずは、システム開発でトラブルが起きる原因を見てみましょう。システム開発でよくあるトラブルの原因は以下の通りです。
- 契約内容が不明確
- 要件定義が不十分
- 依頼会社の協力が不十分
- 役割分担が不明確
- 契約成立以前に作業を開始
それぞれ解説していきます。
契約内容が不明確
システム開発において、契約内容の曖昧さは深刻なトラブルの原因となります。特に納期遅延や金銭面で問題が生じやすく、注意が必要です。例えば、「遅延により一部機能が未完成で支払いトラブルが発生」「予想外の規模拡大で追加費用が問題に」といった事例があります。
こういったトラブルを避けるために、契約前には以下のような項目を確認するべきです。
- システムの完成基準:具体的な機能や性能指標を明記
- 納品物とスケジュール:各フェーズの成果物と期限を明確化
- 支払い条件と時期:マイルストーンごとの支払い計画を策定
- 契約期間:プロジェクトの開始日と終了日を明示
- 不具合発生時の対応:保証期間や修正範囲を明確化
- 追加作業の取り扱い:スコープ変更時の手続きと費用算定方法を規定
これらの項目を詳細に定めることで、発注側と開発側の認識を合わせ、円滑なプロジェクト進行が可能となります。また、予期せぬ問題が発生した際にも、契約書を基に適切な対応を取り、トラブルの拡大を防げるでしょう。
要件定義が不十分
要件定義の不十分さは、システム開発プロジェクトの深刻なトラブル要因となります。要件定義は、システムに必要な機能や性能を明確化し、発注側と開発側の認識を合わせる重要な工程だからです。
要件定義が不十分だと、「依頼した機能が実装されずに納品される」「必要な機能が欠如し、追加開発が必要になる」といったトラブルが発生します。これらは、プロジェクトの遅延や予算超過につながります。
トラブルを回避するには、十分な時間をかけて詳細な要件を固め、文書化することが重要です。また、定期的な確認会議を設けるなど、継続的なコミュニケーションを図ることで、プロジェクトの成功率を高められます。
依頼会社の協力が不十分
委託側の協力不足は、システム開発プロジェクトの重大なトラブル要因です。システム開発は委託先が実施しますが、委託側の適切な協力なしでは理想的な開発は困難です。協力が不十分だと、必要な情報やデータが揃わず、開発が遅延するトラブルが起きやすくなります。たとえば、「委託側がデータ提供をおこなわなかったために、開発遅延が生じた」といったケースが考えられます。
プロジェクトの成功には、両者の緊密な連携が不可欠です。委託側は自社の責任を理解し、必要なデータや情報を迅速に提供するなど、積極的に開発プロセスに関与することが重要です。
役割分担が不明確
役割分担の不明確さは、システム開発プロジェクトにおいて深刻なトラブルを引き起こす要因となります。明確な役割分担がないまま開発が進むと、責任の所在が曖昧になり、問題発生時に双方が責任を転嫁し合う事態に発展しやすくなります。
たとえば、データ整備の責任者が明確でない場合、「相手が進めているはず」という誤った認識により、必要な情報が揃わずプロジェクトが停滞することがあるのです。また、各担当者の権限が不明瞭だと、現場に混乱が生じ、重大な問題の早期発見や適切な指示伝達が困難になります。
結果として、進捗管理が滞り、プロジェクトの遅延リスクが高まります。これらのトラブルを防ぐには、プロジェクト開始前に詳細な役割分担表を作成し、責任と権限を明確化することが重要です。
契約成立以前に作業を開始
契約成立前に開発会社が作業を開始することは、システム開発プロジェクトにおける重大なトラブル要因となります。実際の発注に至らず、他社への依頼やプロジェクトの白紙化が生じる可能性があるためです。
特に口頭での発注意思伝達は履歴が残らず、認識のズレから法的紛争に発展するリスクがあります。複数社から見積もりを取っている場合や、依頼自体が不確実な場合は特に注意が必要です。たとえば、口頭での合意後に作業を開始したものの、正式な契約前にプロジェクトが中止となり、それまでの作業に対する報酬をめぐって争いになるケースがあります。
このようなトラブルを防ぐには、必ず正式な契約書を取り交わしてから作業を開始することが重要です。契約書には作業範囲、期間、報酬などを明確に記載し、双方の合意を文書化しましょう。
システム開発でトラブルが生じた際の対応
システム開発でトラブルが発生した場合、冷静かつ適切な対応が求められます。主な対応策として、相手先との相談交渉と他のシステム開発会社への引き継ぎが挙げられます。これらの対応を適切に行うことで、プロジェクトの回復や完遂の可能性を高めることが可能です。
相手先と相談交渉する
トラブル発生時、まず開発会社との話し合いの場を設けることが重要です。この際、受注書、発注書、議事録、メール履歴などの関連資料を用意し、事実関係と時系列を明確にしておきましょう。
トラブルの原因や背景を詳細に分析し、責任の所在を明らかにすることが交渉の基盤となります。必要に応じて補償内容についても協議し、再発防止のために契約内容や仕様の見直しも検討しましょう。しかし、交渉で解決が望めない場合や、相手先の技術不足により解決が困難な場合は、別の対応策を考える必要があります。
他のシステム開発会社に引き継いでもらう
システム開発でトラブルが発生した場合、依頼先を他のシステム開発会社に変更することも有効な選択肢の一つです。特に、現在の開発会社の技術力不足が原因でトラブルが生じている場合、実績豊富な会社に切り替えることで問題解決の可能性が高まります。
新しい開発会社への引き継ぎの際は、トラブルの原因や現状を詳細に説明することが重要です。これにより、新しい開発会社は問題の本質を理解し、適切な対策を講じられます。
ただし、開発途中のシステムの複雑さや特殊性によっては、引継ぎに多大な時間と労力を要する場合があります。そのような状況では、ゼロからの再開発も視野に入れるべきでしょう。新たに構築し直した方が、コストと品質の両面で優れた結果を得られる可能性があるからです。
新しい開発会社からゼロからの再構築を提案された場合は、その理由を十分に聞いた上で慎重に検討することをお勧めします。
システム開発でトラブルが生じる割合
システム開発でトラブルが生じる割合は全体のどの程度なのでしょうか。システム開発におけるトラブルの発生割合は、プロジェクト管理の基準である「QCD」(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)の観点から評価されます。
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2023」では、システム開発の工期・予算遵守や品質満足度の状況が、プロジェクト規模別に公表されています。
プロジェクト規模 | 工期遵守状況 | 予算遵守状況 | 品質満足度状況 |
100人月未満 | 32.4% | 38% | 22.4% |
100~500人月未満 | 16.2% | 23.2% | 15.4% |
500人月以上規模 | 14.1% | 13.9% | 11.0% |
(参照:企業IT動向調査報告書 2023│一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS))
この表から、半数以上の依頼会社が品質、コスト、納期のいずれかに不満を抱えていることがわかります。また、プロジェクト規模が大きくなるほど、工期遅延、予算超過、品質への不満が増加する傾向にあります。
このデータから、システム開発の失敗、トラブルは決して珍しくないことがわかるでしょう。そのため、システム開発を委託する際には、できる限りの対策を実施する必要があるのです。
システム開発でトラブルを防ぐための対策
システム開発でトラブルを防ぐための対策を紹介します。
- 開発プロジェクトを小さく区切って管理する
- 役割分担を明確にする
- 要件定義を明確にする
- 開発会社と十分なコミュニケーションを取る
- 意思決定可能な範囲から決める
それぞれについて解説していきます。
開発プロジェクトを小さく区切って管理する
システム開発では、プロジェクトを小さなタスク単位に区切って管理することがポイントです。開発工程を細かく区切ることで、各メンバーの役割分担や責任範囲が明確になります。
また、小さな単位に分割したタスクを短い期間で実行することにより、進捗を可視化して管理しやすくなるでしょう。万が一トラブルが発生した場合に、影響範囲を限定できるようになるのもメリットです。
役割分担を明確にする
システム開発プロジェクトの成功には、開発開始前の明確な役割分担が不可欠です。依頼会社と開発会社の間で業務範囲の認識に齟齬があると、トラブル発生時に深刻な問題へと発展する可能性があります。このリスクを回避するためには、要件定義書や役割分担表を作成し、各関係者の業務範囲を詳細に明記することが重要です。
特に発注前の段階では、RFP(提案依頼書)を作成して文書化することをお勧めします。RFPには、プロジェクトの目的、期待される成果物、各関係者の責任範囲、主要なマイルストーンなどを明確に記載します。これにより、プロジェクトの初期段階から全関係者の理解を統一し、将来的なトラブルを未然に防げるでしょう。
要件定義を明確にする
要件定義の明確化は、システム開発プロジェクトをトラブルなく完遂するための必須条件です。プロジェクト全体のゴールを明確に定義し、要件定義を徹底することが重要です。具体的な手順は以下の通りです。
- 解決すべき課題と開発目的を明確にする
- 業務要件を定義する
- システム全体の構成を作成する
- 機能要件を定義する
- 非機能要件を定義する
- 組織体制を決める
- 予算とスケジュールを作成する
- 要件定義書を作成する
要件定義の詳しい進め方や注意点については、以下の記事も参考にしてみてください。
システム開発の要件定義とは?進め方やポイントをわかりやすく解説
自社で要件定義ができない場合は、要件定義をサポートしてくれる開発会社に依頼するのがおすすめです。弊社「Solashi Co., Ltd」は、丁寧なヒアリングを通して、事業戦略を見据えた開発内容の策定、要件定義書の作成を実施しています。弊社のサービスにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
開発会社と十分なコミュニケーションを取る
システム開発プロジェクトの成功には、依頼先との密接なコミュニケーションが不可欠です。システム開発は完成イメージの共有が難しいため、頻繁な情報交換が重要になります。効果的なコミュニケーションの手段として、以下の方法が挙げられます。
- 定例会の開催:進捗確認と課題共有の場を定期的に設ける
- 報告フローの明確化:誰が、誰に、何を、いつ報告するかを明確にする
- こまめな進捗確認:小さな変更や問題も見逃さないよう頻繁に確認する
これらの取り組みにより、プロジェクトの透明性が高まり、問題の早期発見と迅速な対応が可能になります。また、双方の期待値を適切に管理することで、最終的な成果物の品質向上にも貢献するでしょう。
意思決定可能な範囲から決める
大規模なシステム開発プロジェクトでは、全体を一度に決定することが困難な場合があります。そのような状況では、意思決定が可能な範囲から段階的に決めていくアプローチが効果的です。この方法は、後々の変更に伴う大規模な手戻りを防ぐのに役立ちます。
特に有効なのが「アジャイル開発」手法です。機能ごとに開発を進めることで、柔軟性の高いシステム開発が可能になります。この方法は以下の利点があります:
- 迅速な価値提供:優先度の高い機能から順次リリース可能
- 変更への柔軟な対応:途中での要件変更に対応しやすい
- リスクの最小化:早期のフィードバックにより、大きな失敗を回避
不確定要素の多い初期段階では、確実に決められる部分から着手し、状況の変化に応じて柔軟に対応することが重要です。
高品質で信頼性の高いシステム開発は、Solashiにお任せください
システム開発にはさまざまなトラブルリスクが潜んでいますが、適切な対策と信頼できる開発パートナーの選択により、そのリスクを大幅に軽減できます。特に IT や Web に不慣れな企業様にとって、課題を的確に把握し、最適な開発内容を提案できる開発会社の選定は極めて重要です。
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柔軟性も弊社の大きな特徴です。アジャイル開発を採用し、変化する要求に柔軟に対応します。また、Short Project、MVP開発、本開発と段階的に進めることで、リスクを最小限に抑えながら、効率的な開発を実現します。システム開発でお困りでしたら、まずは「Solashi Co., Ltd」までお気軽にご相談ください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。