近年、小売業界を中心に顧客IDの統合が注目されています。複数のサービスやシステムに分散した顧客データを一元化することで、業務効率化やマーケティング精度の向上など、様々なメリットが期待できるからです。
「顧客IDを統合したいが、どのようにしたら良いかわからない」
「何から手をつけてよいかわからない」
このような方に向けて、本記事では顧客IDの統合について、概要や方法、統合する流れなどをわかりやすくまとめました。記事の後半では、顧客ID統合の成功事例も紹介します。顧客IDの統合を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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島添 彰
合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。
顧客IDの統合とは?
顧客IDの統合は、企業が複数のシステムやサービスで管理している顧客データを一元化する取り組みです。IDの統合により、散在していた顧客情報が1つのIDにまとめられ、包括的な顧客管理が可能になります。
たとえば、オンラインショップと実店舗の顧客情報を統合すると、購買履歴や嗜好を全チャネルで把握できるようになります。これにより、顧客データの管理効率が向上し、より精密な顧客像を描くことが可能です。
結果として、的確なマーケティング戦略の立案や、きめ細やかな顧客対応が実現し、顧客満足度の向上につながります。また、顧客にとっても、複数のIDを管理する手間が省け、一貫したサービス体験を享受できる点もメリットです。
顧客IDの統合が重要な理由
顧客IDの統合には、以下のようなメリットがあります。
- 顧客満足度の向上につながるため
- 業務効率を向上できるため
- マーケティングの精度を向上できるため
これらのメリットを詳しく見ていくことで、その重要性がより明確になります。以下、それぞれの理由について詳しく解説していきます。
顧客満足度の向上につながるため
顧客IDの統合は、顧客体験を大幅に向上させる効果があります。従来、複数のサービスを利用する際、顧客は各サービスで個別にIDを作成し管理する必要がありました。この煩雑さは、しばしば顧客の不満や混乱を招いていました。
IDを統合することで、顧客は1つのアカウントで複数のサービスにアクセスできるようになります。これにより、ログインの手間が省け、サービス間の移動がスムーズになります。
結果として、顧客の利便性が高まり、サービス利用への障壁が下がることで、顧客満足度の向上につながるのです。
業務効率を向上できるため
顧客IDの統合は、企業の業務効率を大幅に改善します。特に、多数のブランドや商品・サービスを展開し、複数のチャネルを持つ企業に効果的です。
IDが統合されていない場合、顧客の全体像を把握するには複数のシステムを横断して情報を照合する必要がありました。これには膨大な時間と労力が必要です。IDを統合することで、この課題が解決され、顧客情報が一元化されます。
結果として、データ検索や更新作業が簡素化され、管理にかかるコストが大幅に削減可能です。
マーケティングの精度を向上できるため
顧客IDの統合は、マーケティング活動の質を飛躍的に高めます。サービスごとに個別のIDで管理していると、顧客データが分散してしまい、顧客に関する情報を断片的にしか把握できません。
IDを統合することで、これらの情報が一元化され、顧客の全体像を把握できるようになります。例えば、オンラインでの閲覧履歴と実店舗での購買行動を結びつけることが可能になるでしょう。
この包括的な顧客プロファイルを基に、個々のニーズや行動パターンを正確に分析できるようになります。結果として、カスタマージャーニーの最適化や高度にパーソナライズされたサービス提供が実現します。
顧客IDを統合する方法
顧客IDの統合には、主に「企業側で行う方法」と「顧客側に統合してもらう方法」の2種類があります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、企業の状況や目的に応じて適切な方法を選択することが重要です。以下、各方法について詳しく解説します。
企業側で統合する
1つ目は、企業側で統合する方法です。保有する顧客データを活用して同一顧客を特定し、統合します。具体的には、メールアドレスや電話番号などの情報を基に、同一人物のアカウントを見つけ出します。
この方法の最大のメリットは、顧客側の作業が不要な点です。企業側でスケジュールを管理できるため、比較的短期間で統合が可能です。
一方で、自社内のリソースを大量に投入する必要があり、人的コストが高くなる傾向があります。また、サービスによってデータのフォーマットや管理方法が異なると、データの整合性を取るのに予想以上の時間と労力がかかる可能性があります。
近年では、ID統合にAIを活用する企業も増えてきました。このような技術の活用により、人的コストを削減しつつ、より正確で迅速な顧客ID統合を実現できるでしょう。
関連記事:業務自動化にAIを活用!具体的なツールや活用事例も紹介 - Solashi
顧客側で統合してもらう
もう1つは、顧客自身に新しいIDを登録してもらい、既存のIDと紐づけてもらう手法です。
この方法の最大のメリットは、企業側の作業負担が少ない点です。顧客が主体的に統合作業を行うため、企業側のリソース投入を最小限に抑えられます。また、顧客自身が統合プロセスを管理するため、正確性も向上します。
しかし、この方法にも課題があります。統合作業の手間が顧客の心理的負担となり、サービス利用を中止してしまうユーザーが出る可能性があるのです。さらに、顧客側のペースで統合が進むため、企業側で進捗を管理しにくく、全体の統合完了までに予想以上の時間がかかる可能性があります。そのため、顧客へのインセンティブ提供や丁寧なサポート体制の構築が重要となるでしょう。
顧客IDを統合する流れ
顧客IDの統合は、計画的かつ段階的に進める必要があります。ここでは、ID統合の基本的な流れを紹介します。
- 目標設定
- 現状分析
- 基本ポリシーの策定
- システム設計と開発
- データ移行
これらの顧客ID統合プロセスには、高度なIT技術と深い業務知識が求められます。多くの企業にとって、この複雑なプロセスを内部リソースだけで進めるのは困難です。そこで、専門性を持つパートナーとの協業が効果的な選択肢となります。
弊社「Solashi Co., Ltd」は最新技術に精通したエンジニアチームに加え、事業戦略を理解し、適切な提案ができるコンサルタントが多数在籍しています。ベトナムを拠点とすることで、高品質なサービスを競争力のある価格で提供できることも特徴です。
お客様の事業目標に合わせて、段階的なアプローチや柔軟な開発方法を提案いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
1.目標設定
まずは、ID統合の目標を明確にします。「セキュリティの強化」、「顧客満足度の向上」、「運用コスト削減」など、具体的な目標を立てましょう。
明確な目標設定により、プロジェクトの意義が明確になり、各段階での意思決定がスムーズになります。また、最終的な成果を測定する際の指標にもなります。
2.現状分析
次に、既存のIDシステムや管理方法の詳細な分析を実施します。この段階では、以下の点について調査します。
- 現行システムの構造
- データ形式
- セキュリティレベル
- 運用フロー
- システムごとのID管理方法の違い
- データの品質
これらの調査により、現行システムの全体像と課題を把握します。また、改善が必要な箇所も洗い出しましょう。この分析結果は、ID統合戦略の立案に役立ちます。
3.基本ポリシーの策定
統合IDにおける具体的なルールを定めます。IDの作成方法、登録時に必要な個人情報、登録・認証の手順など、運用に関わる細かな点を決定します。
複数のサービスで共通のIDを使用することになるため、各サービスの特性や要件を考慮し、統一されたルールを策定する必要があります。また、プライバシーポリシーやセキュリティポリシーとの整合性も確認しましょう。
4.システム設計と開発
統合IDの基本方針が決まったら、次は実際のシステム作りに入ります。この段階では、新しいID管理システムの設計と開発を行います。
まず、システムの全体構造(アーキテクチャ)を決めます。ここで重要なのは以下の3点です。
- セキュリティ:顧客情報を安全に守れるか
- 拡張性:将来的な利用者増加に対応できるか
- 使いやすさ:顧客が簡単に利用できるか
また、既存のシステムとスムーズに連携できるよう設計することも大切です。例えば、オンラインショップと実店舗のシステムを段階的に統合できるようにします。
開発時には、十分なテストを行い、システムの安全性と使いやすさを確認します。場合によっては、既存のシステムも新しいIDシステムに合わせて改修する必要があるでしょう。
このプロセスを慎重に進めることで、顧客にとって使いやすく、企業にとって管理しやすいID統合システムが実現します。
5.データ移行
最後に、実際のID統合を実施します。自社で移行作業を実施する場合は、事前に立てた計画に沿って慎重に進めます。顧客側に対応してもらう場合は、適切な告知方法を考え、ガイドラインや問い合わせ窓口を設置するなど、サポート体制を整えましょう。
顧客への影響を最小限に抑えるため、移行に伴うサービス停止時間をできる限り短くすることが重要です。また、スムーズな移行をサポートするため、詳細なガイドラインの作成や専門の問い合わせ窓口の設置も必要です。これらの準備と慎重な実行により、安全で効率的なID統合が実現できます。
顧客ID統合の成功事例
以下では、顧客ID統合の成功事例を紹介します。具体的な統合内容や効果についてまとめていますので、これからID統合を検討している方は参考にしてみてください。
- 株式会社ロッテ
- 株式会社花王
株式会社ロッテ
大手製菓メーカーAは、顧客エンゲージメント強化を目的として顧客ID統合プロジェクトを実施しました。従来、ECサイトや会員サービスなど、各サービスで個別に顧客管理を行っていました。これらを統合し、データ基点のマーケティングを加速させることを目指しました。
プロジェクトでは、顧客IDを軸にデータを一元化し、マーケターが個人情報に直接アクセスすることなくデータ活用できる仕組みを構築。また、自動連携を重視し、誰でも使いやすいシステムを目指しました。
結果として、顧客IDを軸としたデータ統合基盤が実現。今後は、この基盤を活用してより精度の高い顧客情報発信を行い、リアルとデジタルをつなぐマーケティング活動の展開を計画しています。
大手日用品メーカー
大手日用品メーカーBは、顧客とのエンゲージメント強化を目的に、新しいデジタルプラットフォームを立ち上げました。このプラットフォームは「知る」「体験する」「買う」「創る」の4つの機能を軸に、パーソナライズされた体験価値を提供します。
同社では、各ブランドで個別管理されていた顧客IDの統合が大きな課題でした。そこで、最新の顧客データ管理ソリューションを導入し、顧客ID統合基盤を構築。これにより、単一IDでの複数サービス利用や、将来の機能拡張への柔軟な対応が可能になりました。
今後は、商品レコメンド機能の拡充やSNS連携など、さらなるサービス拡張を予定しています。顧客データの深い理解に基づき、時代の半歩先を行くサービス提供を目指しています。
顧客IDの統合ならSolashiまでご相談を
この記事では、顧客ID統合の重要性と方法について解説しました。顧客IDを統合することで、業務効率の向上やマーケティング精度の改善など、多くのメリットが得られます。しかし、統合プロセスには専門知識と経験が不可欠です。
ID統合を成功させるためには、専門知識やノウハウを持つパートナーの存在が欠かせません。技術力があるだけでなく、適切なヒアリングのもと課題を吸い上げたうえで開発内容を提案できる開発会社を選ぶことが重要です。
顧客IDの統合なら、コストパフォーマンスの高いベトナムのシステム開発会社「Solashi Co., Ltd」にお任せください。コストを抑えながら、高品質なクオリティのシステム開発が可能です。
弊社には、事業に精通した日本人プロジェクトマネジャーが複数名在籍しています。そのため、初めて海外へシステム開発を依頼する場合でも、安心してご依頼いただけます。要件が固まっていない段階でも構いません。まずはお気軽に弊社までご相談ください。
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島添 彰
合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。