「システム開発を効率化させたい」
「現行のプロジェクトがうまく回っていない」
このようなお悩みがある方に向けて、システム開発を効率化するポイントを紹介します。システム開発が失敗する原因を知って、適切な施策を取りましょう。
記事の後半では、効率化が重要な理由や現在の生産性を知るための計算式も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。
システム開発の効率化とは
システム開発の効率化とは、開発業務の生産性を上げることです。
開発リソースを有効活用し、無駄な工程を省きながら、優先順位の高い作業をおこなうことで、効率はよくなると考えられています。
同じ時間内により多くの成果を出せるようになれば、収益アップにもつながります。システム開発にかかわらず、業務効率化は企業にとって重要な取り組みの一つです。
システム開発の効率を下げる4つの原因
システム開発の効率を下げる原因は以下の通りです。
- 無駄な開発工程がある
- 開発者のスキルが不足している
- 各工程が属人化している
- 優先順位がはっきりしないまま開発を進めている
システム開発の効率化を図る前に、まずは効率を下げる原因を把握しておきましょう。4つの原因を詳しく解説します。
無駄な開発工程がある
無駄な開発工程があると、作業効率を低下させます。
<無駄な開発工程の具体例>
- 手動の工程が多く、ヒューマンエラーが発生する
- 開発工程ごとに担当者が異なり、連携を取れずに共有漏れが発生する
- 作業工程が標準化されておらず無駄が発生する
- 複雑な社内承認フローにより意思決定に時間を要する
納品時の完成形は同じでも、開発プロセスはエンジニアやチームによって異なります。
無駄な開発工程のあるプロセスでは、さまざまなロスが生じて開発効率を下げる可能性があります。
開発者のスキルが不足している
開発会社やエンジニアの開発スキルが不足していると、以下のようなトラブルのリスクが高まります。
<開発者のスキル不足によるトラブルの具体例>
- 完成したプログラムに抜け漏れがある
- 仕様書の内容理解に手間取る
- テストで不具合を見逃す
こういったトラブルが発生すると、修正や対応に時間がかかります。結果、プロジェクト全体のスケジュール遅延につながり、効率を下げる要因となります。
各工程が属人化している
各工程の属人化も効率化を阻害する要因となります。
「属人化」とは、特定の担当者しか作業やフローを理解していない状態に陥ることです。担当者の不在時にはゼロから調べなければなりません。そのため開発が進まなくなったり、問い合わせに対応できなくなったりします。
特に、単体テストや結合テストは開発者自身が担当するケースもあり、属人化しやすいため注意が必要です。
優先順位がはっきりしないまま開発を進めている
開発工程やタスクの優先順位がはっきりしないまま開発が進むと、プロジェクト全体の流れが滞るリスクがあります。
優先順位が不明瞭だと、本来優先すべきタスクを後回しにして、優先順位の低いタスクから手をつけるようなケースが多発します。
その結果、マストタスクに充てる時間が減り、開発スケジュールに支障をきたしかねません。あるいは、必要なタスクが後回しにされることで、次の工程への着手が滞ることもあります。
システム開発を効率化する5つの施策
システム開発を効率化するために、有効な施策をまとめました。
- 開発工程の見直し
- プロジェクトメンバーの入れ替え
- 業務の標準化
- 開発支援ツールの導入
- システム開発会社への外注
5つの施策を具体的に解説します。
開発工程の見直し
開発の工程を見直して、非効率な作業があれば積極的に排除しましょう。
普段当たり前にこなしている業務でも、冷静に俯瞰するとさほど重要でないことに気付くかもしれません。
システム開発は、以下の開発工程で進みます。
【システム開発工程】
- 要件定義
- 設計
- 実装
- テスト
- リリース
- 運用・保守
開発を始める前に、開発工程をプロジェクトメンバーで見直し、作業の無駄・無理・ムラを排除する意識をもつことも大切です。
よくあるのが、開発工程が進んだから一つ前に戻るのをためらってしまい、開発がずるずると延びてしまうケースです。
必要な要件が整理されていない、もしくは、段階を遡って関連する人の合意が必要になることがあるかもしれません。そのような場合は、意思を持って段階を巻き戻し、適切に意思決定を積み重ねていくことが重要です。
ほかにも、アジェンダのない打ち合わせや形式的な定例会議など、目的のない業務がルーティン化していないかチェックしましょう。
プロジェクトメンバーの入れ替え
開発途中でプロジェクトメンバーのスキル不足が発覚した場合、人員の入れ替えも柔軟に検討しましょう。
エンジニアごとに経験値や得意領域は異なるため、それぞれの状況を加味して人員を組み直します。
各エンジニアが能力に見合った役割を担当することで、プロジェクト全体の効率化が期待できます。
業務の標準化
属人化による効率化の阻害を防ぐためには、業務の標準化も重要です。
標準化とは属人化の対義語で、どの担当者が業務をおこなっても、同じ結果を出せるようにすることです。
情報共有を徹底したり、フレームワークを決めてコードの書き方を統一したりしてみましょう。
判断基準や進め方がメンバー間で統一されます。結果、開発フローや成果物の品質にバラつきがなくなり、効率的に作業を実施できるようになります。
開発支援ツールの導入
開発支援ツールを活用する方法もあります。
以下のようなツールを活用することで、各工程にかかる手間を自動化したり、省力したりできます。
<開発支援ツールの一例>
- IDE(統合開発環境ツール)
- タスク・進捗管理ツール
- テスト自動化ツール
- コードレビュー自動化ツール
また、ヒューマンエラーを防ぎやすくなるため、効率化はもちろん品質向上の効果も期待できます。
最近ではさまざまな機能を備えたツールが登場しているので、自社やプロジェクトに合ったものを選びましょう。
システム開発会社への外注
開発リソースや適正人材を自社で賄えない場合、システム開発会社へ外注するのも一つです。
開発業務を外注すべきか内製化すべきかとお悩みの方は、「システム開発は外注が最適?内製とのメリット・デメリットを徹底比較」をご覧ください。
経験豊富なエンジニアに開発を任せることで、効率的にプロジェクトを進められます。
システム開発会社への外注をお考えであれば、弊社「Solashi Co., Ltd」までご相談ください。
弊社は、ベトナム・ハノイを拠点とするシステム開発会社です。ベトナムの理工系最高峰のハノイ工科大学をはじめ、トップレベルの大学を卒業した学生を中心に採用しています。
また、日本で事業立ち上げ経験のあるPMが在籍しており、コストパフォーマンスが高いシステム開発をサポートします。
高い採用基準に裏打ちされた技術力でご要望にお応えするので、ぜひお問い合わせください。
なぜシステム開発の効率化は重要なのか?
なぜシステム開発の効率化は重要なのでしょうか。主に以下の3つが挙げられます。
- 利益率の向上につながるため
- 市場のトレンドをすぐに反映できるため
- リソース不足を防ぐため
利益率の向上につながるため
システム開発の効率化が重要な理由の一つは、利益率の向上につながることです。
自社のプロジェクトチームが開発する場合も、外注する場合も、効率化は人件費のコストカットに直結します。不要な人件コストが削減できれば、利益率向上につながります。
市場のトレンドをすぐに反映できるため
市場のトレンドを早期に反映できることも、システム開発の効率化が重要な理由の一つです。
システム開発を効率化している企業はリソースに余裕をもてるため、市場のトレンドをすぐに開発へ反映できます。
恒常的に余力があれば、日々更新されていく新技術の習得にリソースを充てられるでしょう。開発環境の活性化や技術力向上にもつながります。
ベンダーの立場なら、競合よりも早いタイミングで新技術を導入することで、激しい競争下での差別化を図れます。
リソース不足を防ぐため
システム開発を効率化することで、エンジニアの負担が減り、リソース不足に陥ることを防げます。
人員が限られた状況で非効率なシステム開発をしていては、スムーズに進まなくなります。結果、エンジニアへの負荷が大きくなり、離職につながるリスクもあります。
システム開発の効率化によりプロジェクトを円滑に進めることで、エンジニアへの負荷も減り、人材の流出を防げます。
関連記事:開発リソースとは?不足する原因・影響・今後の対策を解説
システム開発効率を知るための計算式・指標
システム開発を効率化する目的は、生産性の向上です。生産性を数値化し、評価するための計算式・指標を紹介します。
生産性を求める計算式は「産出 ÷ 投入」です。
この計算により、人員・時間・費用などの投入に対し、どれだけの成果や利益を産出できたかがわかります。
産出と投入に代入するものによって、求められる生産性は変化します。例えば、一人当たりの利益額や、一時間当たりの製造量などです。
代表的な指標は次の二つです。
- 付加価値労働生産性
- 物的労働生産性
これらの指標を解説しますが、生産性を数値化しても、効率化できたかどうかは簡単に判断できません。
その理由とともに、より総合的に評価するのに役立つ、システム開発効率の目安もお伝えします。
付加価値労働生産性
付加価値労働生産性は、一定期間や人員1人当たりでどれだけの付加価値を生み出しているかを測る指標です。
付加価値には、売上から、生産にかかる人件費・材料費などの原価を差し引いた金額が代入されます。計算式は以下の通りです。
- 付加価値労働生産性 = 付加価値 ÷ 労働量
成果物に価格を付けられるベンダーであれば、この計算式から生産性を算出できます。ただし注意すべきは、開発効率が利益に必ずしも直結するわけでないことです。
付加価値労働生産性の限界
効率化により多くの案件をこなせることで、生産性が向上することもあります。
しかし、類似案件の実績があり、すでにノウハウが蓄積されていれば、スムーズな進行で多くの案件をこなせるのも事実です。
システム開発は案件ごとに特色が異なります。そのため、かかるリソースを均一化できません。加えて、利益額は市場価値や物価に左右されます。利益増加が開発効率化によるものであるかは判断しかねるでしょう。
自社のWebサービスやアプリ、社内の業務システムの開発の場合、利益の数値化が困難になります。
利益の産出には、マーケティング効果や社内のシステム以外の効率化施策も影響するからです。純粋に開発した成果物だけの利益を数値化するのは難しいでしょう。
物的労働生産性
物的労働生産性は、一定時間や人員1人当たりの物理的生産効率を測る指標です。
個数や量などを成果物として、どれだけの生産性があるかを表します。計算式は以下の通りです。
- 物的労働生産性 = 生産量 ÷ 労働量
物的労働生産性の限界
システム開発では、設計書作成本数やモジュール製造数、テスト実施件数をどれだけこなせるかを生産性と解釈できます。
しかし、いずれも業務の難易度に大きな差があり、1件の成果として同等に扱えば、実質的な生産性を計測できません。
例えばテスト工程で、数分で完遂するケースと数十分かかるケースを同じ1件とするのは無理があります。
難易度によって各ケースに生産量のみなし値を用意できれば、実態に近い生産性を算出できるかもしれません。
ところが、膨大な数を正確に計算するのは難しく、手間もかかります。特に設計と製造は実作業より思考や調査に費やす時間が多い業務のため、定量化がより難しくなります。
また、生産量に比例し生産性が上がる点も、システム開発には適合しません。
設計書・モジュール・テストケースの数が無為に増えている場合でも、生産性は高くなるからです。実際の効率や品質の良し悪しは無視されます。
システム開発効率の目安
システム開発では、効率化の成果を明確に知る指標を見つけることは難しいでしょう。しかし、下記に変化があるかどうかから総合的に見ることは可能です。
- バグや戻り作業の発生件数
- 進捗状況
- マストタスクの後回しによる次工程への着手停滞頻度
- タスク発生から着手するまでの時間
- 設計書・モジュールなどの品質
- 情報非共有で手間取る頻度
- 労働時間、残業の頻度
- 今後運用保守をする際に見やすいソースコードになっているかどうか
開発現場の効率化は、いかに早く品質を保持した成果物を上げられるかに収束されます。
まずは、上記のような点を中心に精査し、現場で丁寧にヒアリングをすることから着手してみてもよいでしょう。
システム開発を効率化した事例
最後に、システム開発の効率化に成功した事例を紹介します。
あるメーカー会社では、アナログで管理していた情報を一元化するためのシステム開発を急いでいました。
そこで、導入したのがローコードでアプリケーションが開発できるWebアプリケーション自動生成ツールです。
開発ツールの活用により、開発スキルと採用技術の標準化を促進させました。無事工期の短縮に成功し、製品の品質改善や工場の生産性を改善するサイクルを回す仕組みが整いました。
また、ある流通会社の事例も取り上げます。基幹システムと内製開発システムの開発を、短納期かつ高頻度でおこなう必要がありました。
開発ツールの導入とアジャイル開発の採用により、開発期間を大幅に短縮させました。現場からもアイデアが寄せられるようになり、DX化が促進されたケースです。
システム開発の効率化をご希望の方は、弊社「Solashi Co., Ltd」までお問い合わせください。
効率化に関する積極的なご提案をさせていただくことはもちろん、柔軟にシステム開発を進められるアジャイル開発にも対応しています。
システム開発の効率化ならSolashi
システム開発の効率が悪いと感じた場合、現状の効率を踏まえた上で、効率化を妨げている原因を洗い出すことが重要です。現状抱えている課題に対して、適切な施策を取りましょう。
「自社でシステム開発をおこなうリソースがない」
「現行のプロジェクトがうまく回っていない」
このようなお悩みがある場合は、ぜひ、弊社「Solashi Co., Ltd」にお任せください。開発を効率化するためのサービスやフレームワーク、ライブラリを積極的にご提案します。
これにより、お客さまのご要望にもスピードをもって開発を進めることが可能です。
新規のご相談はもちろんのこと、既存のアウトソーシングが難航している場合も、まずは「Solashi Co., Ltd」までお気軽にご相談ください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。