技術スタックはシステム開発に使用する言語やフレームワークの組み合わせです。適切なスタックを選ぶことで、開発プロセスが効率化し、プロジェクトの成果を最大限に引き上げることが可能です。しかし、技術スタックの選択肢は多様化しているため、選定に悩むケースも少なくありません。
「プロジェクトに最適な技術スタックを知りたい」
「技術スタック選定での失敗を防ぐ方法を知りたい」
そのような方に向けて、この記事では技術スタックを選ぶポイントや、最新のトレンドについて解説します。技術スタックの選択に迷っている方や、より良い技術を知りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
島添 彰
合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。
技術スタックとは?
技術スタックとは、ソフトウェア開発に使用される技術の組み合わせです。これには、プログラミング言語、フレームワーク、データベース、サーバーなどが含まれます。適切なスタックを選ぶことで、以下のメリットを享受できます。
- 開発のスピードアップ:効率的なツールで作業時間短縮
- 保守性の向上:コード管理や更新が容易に
- パフォーマンスの最適化:処理速度と安定性が向上
市場競争力を高めるためにも、新しい技術スタックへの移行が欠かせません。特に、古い技術依存のシステムから新しい技術への移行は、持続可能なシステム運用にもつながります。
技術スタックを理解し、適切に選択することは、プロジェクトを成功させる土台となります。
技術スタックを構成する要素
ここでは技術スタックを構成する代表的な要素を8つご紹介いたします。
- OS(Operating System)
- プログラミング言語
- ライブラリ
- サーバー
- サーバーサイド層
- クライアントサイド層
- API(Application Programming Interface)
- 監視用ツール
これらの要素は、それぞれが特定の役割を担いながら、全体として一つのシステムを形成します。各要素の特徴と重要性を理解することで、プロジェクトに最適な技術スタックを選択できるようになります。それでは、各要素について詳しく見ていきましょう。
1. OS(Operating System)
OSは、ユーザーとハードウェアを繋ぐ重要なシステムです。OSの主な役割は、システムやアプリケーションの操作を円滑にし、使いやすさを向上させることにあります。代表的なOSには、以下のものがあります。
- Windows
- macOS
- Linux
OSにより、ユーザーは直感的にコンピュータを操作し、必要な情報にアクセスできます。また、システムの基盤として、アプリケーションの動作環境を整え、ハードウェアリソースを効率的に管理する役割も担っています。
2. プログラミング言語
プログラミング言語は、エンジニアがコンピュータに指示を与えるための手段であり、ソフトウェア開発において不可欠な要素です。プログラミング言語には様々なものがあります。以下は代表的なプログラミング言語の一例です。
- Python
- Java
- Ruby
- PHP
- C言語
- Haskell
プログラミング言語には、それぞれ特徴があります。例えば、Pythonは読みやすい構文と豊富なライブラリにより、データ分析やAI開発など幅広い分野で人気です。Javaは実行環境に縛られないソフトウェア開発に適しています。プロジェクトの目的やチームのスキルに応じて、最適な言語を選択することが重要です。
また、各言語のバージョンにも注意を払う必要があります。新しいバージョンでは機能の追加や性能の向上が行われる一方で、古いバージョンはセキュリティリスクを抱える可能性があります。そのため、プロジェクトの要件、チームの習熟度、セキュリティ面を考慮しつつ、適切なタイミングでバージョンアップを行うことが重要です。
3. ライブラリ
ライブラリは、ソフトウェア開発の効率化に重要な役割を果たします。ライブラリは、よく使われる機能やプログラムの部品を集めたコードの集合体です。ライブラリを使用することで、開発者は同じ機能を何度も一から作り直す必要がなくなり、開発時間を大幅に短縮できます。
各プログラミング言語には人気のライブラリがあります。JavaScriptの「React」やPythonの「Pandas」、「NumPy」などが代表例です。これらは特定のタスクや機能を簡単に実現できるツールセットを提供しており、多くの開発現場で広く利用されています。
ライブラリを適切に活用することで、開発速度の向上だけでなく、バグ発生率の低減も期待できます。結果として、迅速かつ高品質なアプリケーション開発が可能となるでしょう。
4. サーバー
サーバーは、ネットワーク上でデータを提供し、リクエストを処理する中心的な役割を担うコンピュータです。クライアントからの要求に応じて、ファイルの送信やデータの保存など、様々な処理を行います。例えば、ウェブサーバーは、ブラウザからのリクエストに対してウェブページを返します。
近年、AWSやGoogle Cloudなどのクラウドサービスの利用が一般的になってきました。これらのサービスを活用することで、需要に応じて柔軟にリソースを調整できる、システム障害時の復旧が容易になる、といったメリットが得られます。
サーバーは、リクエストに常時対応できるよう、安定した稼働が欠かせません。そのため、将来的なシステム拡張も見据えた慎重な選定が必要です。
5. サーバーサイド層
サーバーサイド層とは、バックエンドとも呼ばれるユーザーが視認や操作ができないサーバー側での処理をおこなう領域です。主に、ビジネス上の重要な計算やルール適用、データベースとのやり取り、セキュリティの管理などを担当します。
サーバーサイド層は、上述のOS、プログラミング言語とライブラリ、サーバーやデータベースなどから構成されます。加えて近年では、Node.jsやDjango、Ruby on Railsなどのフレームワークの利用が一般的です。これらのフレームワークは、効率的な開発をサポートする利便性の高い機能を提供しています。
サーバーサイド層の構成要素の選定は、アプリケーション全体の性能やセキュリティにも影響を及ぼすため、慎重な検討が必要です。
6. クライアントサイド層
クライアントサイド層は、ユーザーが直接操作するアプリケーションの部分であり、主にブラウザ上で動作する領域です。
使用される言語はHTMLやCSS、JavaScriptなどが代表的です。ReactやVue.jsなどのライブラリやフレームワークが広く使われ、複雑なUI(ユーザーインターフェース)構築を効率化します。
クライアントサイド層は、アプリケーションの使いやすさとパフォーマンスに直結するため、ユーザー体験(UX)の向上に重要な役割を果たします。適切な設計と実装により、レスポンシブなデザインや高速な画面遷移を実現し、ユーザーの満足度を高めることができます。
7. API(Application Programming Interface)
APIは、異なるソフトウェア間でデータやサービスを交換するための仕組みです。APIを利用することで、開発者は外部サービスの機能を簡単に自社のアプリケーションに組み込むことができます。例えば、Google MapsのAPIを使用すれば、独自のアプリに地図機能を追加する。といったことが可能です。
APIの活用は、機能の拡張や他社サービスとの連携を容易にし、開発コストの削減にもつながります。適切なAPI設計と実装は、現代のWeb開発で不可欠な要素となっています。
8. 監視用ツール
監視用ツールは、システムの健全性を常時チェックし、問題の早期発見と迅速な対応を可能にします。サーバーやネットワークの状態をリアルタイムで監視し、異常を検知した場合には即座に管理者に通知します。
監視ツールの適切な導入と運用は、システムの安定性とパフォーマンスの維持に不可欠です。Webサービスの障害は売上減少や信頼性低下につながるため、事前の問題検知と迅速な対応が重要です。効果的な監視体制の構築により、サービスの継続的な改善と高品質な運用が実現できます。
技術スタックの実例
ここでは、よく使われる技術スタックの組み合わせを6つ紹介します。
- LAMP
- MEAN
- MEVN
- MERN
- Meteor.js
- JAM
これらの例を知ることで、プロジェクトに適した技術の選び方のヒントが得られるでしょう。
1. LAMP
LAMPは、Web開発で広く使われる技術スタックの一つです。構成内容の頭文字からLAMPと呼称されています。
- Linux(OS)
- Apache(Webサーバー)
- MySQL(データベース)
- PHP/Perl/Python(プログラミング言語)
LAMPは、Webアプリケーション開発の定番スタックです。オープンソースで構成されているため、低コストで始められ、豊富な情報と広いコミュニティのサポートが魅力です。
WordPressなどのCMSの基盤としても広く使用されており、中小規模のWebサイトやアプリケーションに適しています。安定性と実績があるため、初心者にも扱いやすく、多くの企業で採用されています。
2. MEAN
MEANはWebアプリケーションを開発する際に利用されるオープンソースの組み合わせです。
- MongoDB(データベース)
- Express.js(サーバーサイドフレームワーク)
- Angular(フロントエンドフレームワーク)
- Node.js(サーバーサイドの実行環境)
MEANは、モダンなJavaScriptベースのフルスタック開発環境です。フロントエンドからバックエンドまで一貫してJavaScriptを使用できるため、開発効率が高く、コードの再利用性に優れています。
3. MEVN
MEVNは、MEANのバリエーションで、Angular.jsの代わりにVue.jsを採用したスタックです。
- MongoDB(データベース)
- Express.js(バックエンドフレームワーク)
- Vue.js(フロントエンドフレームワーク)
- Node.js(クロスプラットフォームサーバー)
Vue.jsは特に、複雑な機能を持つWebページを簡単に作れることで知られています。例えば、ユーザーの操作に応じてリアルタイムで情報を更新したり、スムーズなページ遷移を実現したりするのが得意です。
このような特徴から、MEVNは短期間で高機能なWebアプリケーションを開発したい場合に適しています。特に、迅速な開発とデプロイ(公開)が求められるプロジェクトで力を発揮します。
4. MERN
MERNはMEANと同様にJavaScriptベースですが、フロントエンドにReactを採用している点が特徴です。
- MongoDB(データベース)
- Express.js(バックエンドフレームワーク)
- React(フロントエンドフレームワーク)
- Node.js(クロスプラットフォームサーバー)
動的でリアルタイム性の高いアプリケーション開発に適しており、特にモバイルアプリ開発で人気があります。Reactを使用することで、高性能な動的ユーザーインターフェースを容易に構築可能です。単一言語での開発により、コードの一貫性と開発効率が向上し、現代的で高度なWebアプリケーションを迅速に開発できます。
5. Meteor.js
Meteor.jsは、フルスタックJavaScriptフレームワークです。
クライアントサイドとサーバーサイドの両方でJavaScriptを使用するため、スムーズかつ効率的に開発できます。また、豊富なパッケージエコシステムを持っており、必要な機能を簡単に追加できるのも特徴です。
その他にも、Meteor.jsには簡単な操作性、豊富なパッケージとライブラリ、デバッグ機能など、様々なメリットがあります。
6. JAM
JAMは、JavaScript、API、マークアップ(Markup)で構成されたWebサイト制作に特化した技術スタックです。
事前にページを生成し、CDNから直接配信することで、高速で安全、大量アクセスに強いサイトを実現します。ウェブサーバーを必要としないため、運用コストの削減やセキュリティリスクの低減が可能です。
メディアサイトやコーポレートサイトなど、閲覧者によらず同一内容を表示するサイトに適しています。ただし、ユーザーごとに異なるコンテンツを表示する必要がある場合には不向きです。Jamstackは、従来のウェブ開発の課題を解決するアプローチとして注目されています。
技術スタックの選び方で押さえるべきポイント
技術スタックを選ぶためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
- 解決したい課題を理解する
- 組織のバックグラウンドを理解する
- 技術スタックの市場を理解する
- 技術スタックのデメリットを理解する
適切な技術スタックを選ぶには、専門的な知識と労力が欠かせません。「Solashi Co., Ltd」では豊富な経験と専門知識を活かし、お客様のニーズに最適な技術スタック選定から導入までを包括的にサポートします。依頼先をお悩みなら、ぜひ弊社にご相談ください。
解決したい課題を理解する
自社のニーズや具体的な問題を洗い出し、どのような課題を解決するのかを明確にすることが重要です。
例えば、ページの読み込み速度が遅い場合はパフォーマンス向上に寄与する技術が必要です。また、UIの改善が課題であればフロントエンドの性能を高める手段が求められます。
課題を正確に把握することで、より適切な技術スタックを選定でき、効果的な解決策を見出すことができます。
組織のバックグラウンドを理解する
技術スタックの選定では、組織のバックグラウンドを考慮しなければなりません。そのような考慮なしに技術スタックを選ぶと、非現実的かつ持続性に欠ける選択になる可能性があります。
たとえば、macOSを主に使用しているチームがWindowsを導入すると、これまでの経験やスキルを活かすのが難しくなるでしょう。新しいOSに慣れるための学習コストが発生したり、作業効率が低下したりするおそれもあります。同様の理由で、プログラミング言語の選定も特別な理由がない限り、既に使用している言語を選ぶことをおすすめします。
組織のスキルセットや将来性を考慮しながら、適切な技術スタックを選ぶことが重要です。
技術スタックの市場を理解する
技術スタック市場の理解も、技術スタックを選ぶ上で重要なポイントです。市場動向を把握することで、長期的に持続可能な技術選定が可能になります。
まず、技術スタックの人気や業界での実績についてリサーチしましょう。市場で広く使われている技術は、豊富な情報や活発なコミュニティが存在し、問題解決がスムーズにできる利点があります。
また、技術スタックのサポート状況や更新頻度の確認も大切です。定期的に更新されている技術であれば、セキュリティ面でも安心です。一方、利用者が少ない技術は将来的にサポートが終了するリスクが高くなります。
技術スタック市場の動向を把握し、持続性の高い技術を選定しましょう。
技術スタックのデメリットを理解する
新しい技術スタックの採用にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。効率化を見込める技術スタックは魅力的ですが、導入によるリスクも無視できません。
具体的なデメリットとして、以下のようなものが考えられます。
- 学習や情報収集のコストが発生する
- 初期は開発効率の低下が懸念される
- 対応できるエンジニアが十分に確保できない可能性がある
これらのデメリットを理解して技術スタックを選定することで、トラブルにも迅速に対応できます。
技術スタックの最新トレンド
最後に、技術スタックの最新トレンドを紹介します。
- プログラミング言語のトレンド
- ライブラリ・フレームワークのトレンド
- Web技術のトレンド
近年の動向を押さえることで、自社に最適かつ継続的に使用できる技術スタックを選べるでしょう。
プログラミング言語のトレンド
プログラミング言語のトレンドは時代とともに変化していますが、Web開発でよく使われている言語には傾向があります。特にJavaScriptは、その汎用性と柔軟性からフロントエンド開発の中心的な存在となっています。ReactやVue.jsなどのライブラリ・フレームワークと組み合わせることで、高機能なアプリケーションを効率的に開発可能です。
PythonはAIやデータサイエンスの分野での利用が急激に進み、Web開発にとどまらず、さまざまな領域で人気です。2024年9月の世界トレンド調査でも首位(※)を獲得しています。
また、JavaやC++などもモバイルアプリや大企業のシステム開発に利用され、長年にわたり多くの開発者に支持されています。
※出典:TIOBE|TIOBE Index for August 2024
フレームワークのトレンド
Web開発で使用されるフレームワークにも一定のトレンドが存在します。フレームワークのトレンドとしては、React.js、Vue.js、Angular、Next.jsが注目されています。
- React.js:コンポーネントベースのアーキテクチャ、仮想DOMによる高速レンダリング。
- Vue.js:柔軟性と学習のしやすさが特徴。小規模から大規模プロジェクトまで適用可能。
- Angular:エンタープライズレベルのアプリケーション開発に適する。依存性注入、モジュール性、テストしやすさが特徴。
- Next.js:サーバーサイドレンダリングと静的サイト生成機能。SEOに優れたアプリケーション構築が可能。
これらのフレームワークを活用することで、ユーザーインターフェースの設計、パフォーマンス向上、開発プロセスの効率化が可能です。
Web技術のトレンド
WEB技術のトレンドは、ユーザー体験の向上と開発効率化を目指して急速に進化しています。主なトレンドとして、以下の4つが挙げられます。
- WEB技術とモバイルアプリの統合:プログレッシブウェブアプリ(PWA)により、ブラウザ上でネイティブアプリ並みの体験を提供。
- クラウドサービスの活用:AWS、GCP、Azureなどのプラットフォームにより、開発者はアプリケーション構築に集中可能に。
- AIと機械学習の導入:ユーザーの好みや行動を学習し、一人一人に合わせた情報やサービスを提供。
- サーバーレスアーキテクチャの採用:開発者がビジネスロジックに集中でき、コスト効率の良いアプリケーション運用を実現。
これらのトレンドは、開発コストの削減やメンテナンス効率の向上、ユーザーエンゲージメントの増加などの利点をもたらしています。
技術スタックの管理やアップデートなら「Solashi」にお任せ!
本記事では、技術スタックの構成要素や最新トレンドについて解説しました。適切な技術スタックの選択により、効率的な開発と高品質なシステムの実現が可能になります。しかし、技術スタックの管理やアップデートは、専門的な知識や経験が必要なため、自社だけでの対応が難しい場合も少なくありません。
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島添 彰
合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。