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ITエンジニア不足はなぜ?原因や対策、解決につながった事例を解説

ITエンジニア不足はなぜ?原因や対策、解決につながった事例を解説

ITエンジニア不足はなぜ?原因や対策、解決につながった事例を解説

ビッグデータの活用やAI・loTなどデジタル技術の発展が加速する中、日本国内ではITエンジニア不足が深刻化しています。

「自社のITエンジニア不足を解消したい」
「ITエンジニア不足の根本的な原因について知りたい」

このように考える経営陣や技術部門の担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、日本国内のITエンジニア不足の実態を詳しく説明します。具体的な原因や対策にも言及し、実際にITエンジニア不足を解決した事例も紹介します。

島添 彰

合同会社Solashi Japan 代表取締役。サントリーにて社内向けシステムの開発・運用に携わる。Yper株式会社を創業し、CTO・CPOとしてプロダクトの立ち上げ・グロースに従事。

日本国内のITエンジニア不足の実態

日本国内のITエンジニア不足の実態を解説します。ITエンジニアが足りない状況は、業界や業種に限らず多くの分野で課題となっています。

しかし、どれくらい不足しているのか、どのようなスキルを持った人材が足りていないのかをご存知でしょうか。

正しく現状を把握するため、経済産業省や独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査結果をもとに、ITエンジニア不足の実態を説明します。

2030年に最大で79万人のIT人材が不足

(出典:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 報告書概要版|経済産業省

2016年に経済産業省が公表した調査の予測によると、IT関連産業への入職者は2019年をピークに減少しました。IT市場の規模拡大に伴い、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると考えられています。

このシナリオは、IT需要が「高位(成長率3%〜9%)」の成長が著しいケースで算出されました。

しかし、「低位(成長率1%)」のケースでも約41万人の人材不足が懸念されています。同調査では、人材の高齢化が進むことも指摘されています。

また、2022年のIPAの調査では、85%以上のIT企業がIT人材の量の「不足を感じている」と回答しました。

(参照:デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度) 企業調査報告書|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

この2つの調査から、以下の状況がうかがえます。

  • 国内全体で、慢性的なIT人材不足と人材の高齢化が懸念されている
  • 現在進行形で多くの会社が、IT人材不足の課題を抱えている

先端IT技術や情報セキュリティ分野での人材不足が懸念

特に不足が懸念されているのが、「先端IT人材」と「情報セキュリティ対策を担う人材」です。

(出典:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 報告書概要版|経済産業省

経済産業省の予測では、2020年、ビッグデータ・loT・人工知能など先端技術を扱う先端IT人材の不足は約4.8万人です。

情報セキュリティ人材は、約19.3万人不足すると見込まれていました。これらの分野は、次のような状況から需要拡大が予想されています。

  • IT空間の拡大とともにサイバー攻撃の手口が巧妙化し、情報漏えいリスクが高まっている
  • ビッグデータ・loT・人工知能などデジタル技術の発展が急速に進んでいる

次の節のとおり2023年時点では、特に情報セキュリティと先端技術の分野で人材不足が顕著な様子は見られていません。

しかし、セキュリティ意識が高まりDXが推進される時代であること、IT人材が慢性的に不足していることに変わりはありません。今後も人材不足の深刻化が懸念されるでしょう。

需要が高いIT職種はデータサイエンティストやビジネスデザイナー

実際に人材不足が目立っている職種として、データサイエンティストやビジネスデザイナー、プロダクトマネージャーが挙げられます。

(出典:DX白書2023|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

上の図は、IPAが公表した「DX白書2023」の職種別のデジタル事業に対応する人材の「量」に関する調査結果です。

データサイエンティスト(72.3%)、ビジネスデザイナー(70.1%)、プロダクトマネージャー(68.3%)が不足感の強い職種として挙げられています。

これらの需要が高まっているのには、次のような背景が推測されます。

  • 競合との差別化や新製品の開発・顧客開拓を進めるにあたりデータ活用が欠かせなくなっている
  • 競合優位性を高めるために、特定の技術だけでなくビジネス感を持ったマネージャーやデザイナーが求められている

政府が実施するITエンジニア不足への対策

IT需要の高まりに反してITエンジニアが不足する事態に、政府も対策を講じています。

学校でのプログラミング教育の必修化・充実化

新学習指導要領に基づき、小・中学校および高等学校情報科でプログラミング教育の必修化・充実化が行われています。

学校実施年度施策
小学校2020年度・プログラミング教育を必修化
中学校2021年度・技術・家庭科(技術分野)でプログラミングや情報セキュリティに関する内容を充実化
高等学校 情報科2022年度(学年進行)・全生徒が履修する「情報1」と、選択科目の「情報2」を開設・プログラミングのほかネットワークや情報セキュリティ、データベースについての学習強化

こうした流れには、以下のような国の考えがうかがえます。

  • プログラミング教育を通して論理的な思考を養いたい
  • 将来的に数十万人の不足が予測されるIT人材を早急に育成したい

230万人のデジタル人材の育成計画

地方が抱える課題の解決や、すべての国民がメリットを享受できるデジタル実装を目指す国家構想に「デジタル田園都市国家構想」があります。

その実現の一環として掲げられているのが、デジタル人材の育成・確保です。

関係省庁が連携して、2026年度末までの5年間で230万人のデジタル人材を育成する取り組みが始まっています。

(参照:デジタル人材の育成・確保に向けて|内閣官房

なぜITエンジニアが不足するのか?4つの理由

ITエンジニアが不足する主な要因として、以下の4つが挙げられます。

  1. 働き方の変化
  2. IT需要の急速な拡大
  3. IT技術の高難易度化
  4. 会社ごとの労働環境による影響

根本的な要因を探ることは、人材不足解消への手がかりになります。一つひとつ詳しくみていきましょう。

働き方の変化

人々の働き方が変化していることもITエンジニア不足を後押しする要因となっています。

総務省統計局が公表した労働力調査によると、情報通信業にかかわる技術者の2023年の平均就業時間は2013年と比較して約8.3%減少しました。

(参照:労働力調査結果(総務省統計局)|政府統計の総合窓口(e-Stat)

平均就業時間がの減少した背景には、2019年4月に長時間労働の是正を目的として施行された働き方改革関連法案(※一部、2020年4月から施行)や契約社員・パートタイマーなど非正規労働者の増加があります。

これに加えて、将来的な労働力人口の減少や就業者の高齢化もITエンジニア不足を加速させる要因です。

(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「人手不足の現状と今後の展望」

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2023年に公表した調査によると、日本国内の労働力人口ならびに就業者数は、年間50万人ペースで減少していくことが示されています。

同調査では、就業者の高齢化も指摘されており、20代〜50代の働き盛りのITエンジニアを確保することはより困難になっていくと考えられています。

IT需要の急速な拡大

DX推進やAI技術の発展、ビックデータの活用、働き方改革などの要素が絡み合い、IT需要の急速な拡大が進んでいます

矢野経済研究所の調査によると、2025年の国内民間IT市場規模は155,300億円(予測値)となっています。2019年度の128,900億円から、20%程度成長する見込みです。

2024年度以降は、基幹システムやサーバーのリプレイスをはじめとする実践的なDXへの投資が加速すると予測されています。それに伴い、IT人材不足が続くと考えられるでしょう。

(参照:国内企業のIT投資に関する調査を実施(2023年)|矢野経済研究所

IT技術の高難易度化

IT技術自体の高難易度化によって、会社が求めるスキルや経験を持った人材を確保できていないことも要因の一つです。

先の章でも触れましたが、特に「先端IT人材」の不足が懸念されています。先端IT人材と従来型IT人材の違いは、以下のとおりです。

種類定義
従来型IT人材ITシステムの受託開発や運用・保守などを担える人材。既存のツールの使用や要求に応じたプログラミングができる。
先端IT人材クラウドコンピューター、AI、ビッグデータなどの先端技術を扱うことができる人材。AIエンジニアやクラウドエンジニア、データサイエンティストといった職種が該当する。

また、経済産業省が2016年に実施した「IT人材に関する各国比較調査」の結果も、ITスキル向上の必要性を高めています。

この調査では、各国のIT人材の平均スキルレベルを次のように示しています。

レベル1最低限求められる基礎知識を有している人材
レベル2基本的知識・技能を有している人材
レベル3応用的知識・技能を有している人材
レベル4高度な知識・技能を有している人材
レベル5社内のハイエンドプレーヤー
レベル6国内のハイエンドプレーヤー
レベル7国内のハイエンドプレーヤーかつ世界で通用するプレーヤー
平均レベル
米国4.05
インド3.90
中国3.58
インドネシア3.43
ベトナム3.31
タイ3.21
日本3.17
韓国3.14

(参照:IT人材に関する各国比較調査 結果報告書(経済産業省)|国立国会図書館 インターネット資料収集保存事業(WARP)をもとに弊社が作成)

ITスキルの平均は、米国ではレベル4を超え、中国やインドではレベル3の後半に達しています。日本はレベル3の前半に留まっており、高い技術力を持ったIT人材の育成が必要な状況となっています。

会社ごとの労働環境による影響

労働環境が整っていない会社では、ITエンジニア人材不足に陥る場合があります。

以下は、SES事業やSaaS事業を展開する株式会社エージェントグローが調査し、エンジニアの転職理由をまとめたものです。

(出典:7割以上のエンジニアが、これまで行った転職は「成功した」と回答転職のきっかけは「賃金への不満」が最も多い結果に - 株式会社エージェントグロー|PR TIMES

ITエンジニアが転職を考えたきっかけとして、「賃金の不満」「労働環境への不満」が上位に挙がっています。

賃金を含め労働環境が悪ければ、ITエンジニアが転職してしまうのもやむを得ないでしょう。転職による人手不足でさらに労働環境が悪化すれば、人が集まりにくくなる悪循環につながる恐れもあります。

ITエンジニア不足を解消するための5つの対策

ITエンジニア不足の対策として、次の5つを提案します。

  1. オフショア開発の活用
  2. 社内のエンジニア待遇の見直し
  3. 計画的なITエンジニア育成の実施
  4. 安心して働ける労働環境の構築
  5. 採用力の強化

オフショア開発の活用

オフショア開発とは、システムやソフトウェア・アプリ開発等の一部もしくはすべてを海外の開発会社に委託することです。

人件費が安く、多くのITエンジニアを抱えている国や地域のオフショア開発会社に委託することで、人材不足の解消やコスト削減を実現できます

ただし、言語や文化の違いからコミュニケーションの障壁が発生することを頭に入れておくことが必要です。

認識の齟齬が生まれないよう、定期的なミーティングの実施や、コミュニケーション方法の確立などの対策が求められます。

関連記事:オフショア開発とは?基本知識やメリット、失敗しないための対策

社内のITエンジニア待遇の見直し

多くの会社がITエンジニアを求めていることから、採用のハードルが高くなっています。

新たに雇用者を見つけるのは容易ではないでしょう。そのため、社内に在籍しているITエンジニアの流出を防ぐ対策が重要になります。具体的には給与面の改善と、福利厚生の充実が挙げられます。

ITエンジニアは、人事評価の担当者などから業務内容が見えにくい側面があります。業務時間や内容、持っているスキルと給与が見合っているのかを正しく判断しましょう。

長く自社で働いてもらえるよう、福利厚生を充実させることも効果的です。ITエンジニアは勤務時間が不規則になりがちなため、フレックス制の導入を検討してみるのもよいでしょう。

計画的なITエンジニア育成の実施 

将来的なITエンジニア不足に備え、新卒や若手をポテンシャル採用して、計画的に育成する会社も増えています。

自社環境や会社の理念に合った人材に育てられることから、離職率の低下も期待できるでしょう。

ITエンジニアを育成する際には、中長期的な計画を策定することが大切です。育成の目的や必要としている人物像を明確にし、育成対象者のキャリアプランに沿って具体的な研修内容を決定しましょう。

ITエンジニア育成の方法として、以下のような方法が挙げられます。

育成方法概要
OJT研修現場の実践研修。現場で働く先輩や同僚からの指導が受けられるため、実際の業務に役立つスキルを身につけることができる。
社内勉強会組織全体として新しい技術や知見を身につけることができる。社員同士のコミュニケーションの場としても有用。
Off-JT通常業務から離れて学習することで、集中して知識を得ることができる。研修者が複数いる場合は、教育の均一化を図れる。
eラーニング時間や場所を問わないため、自主的な学習を促すことができる。研修の会場や日程を調整する必要がなく、実施までのハードルが低いこともメリット。
外部研修サービス研修のプロが提供するサービスを活用することで、質の高い研修を実施できる。研修の運用は外部が行うため、自社の担当者の負担がかからないこともメリット。

安心して働ける労働環境の構築 

待遇の見直しにも通じることですが、ITエンジニアが安心して働ける環境を構築し、定着を促すことが大切です。

例えば、ITエンジニアの残業時間は他業種と比べて多いと言われています。これは、急な仕様変更や下請け構造などが原因とされています。

残業が多い環境だと、プライベートの時間を取れずに適切なワークライフバランスを保つことが難しくなるかもしれません。

通勤・残業時間の削減には、リモートワークの推進やIT部門全体の業務効率化が効果的です。また、上司や同僚に気兼ねなく相談できる環境を整備し、メンタルヘルスケアにも配慮しましょう。

自社のITエンジニアに長く働いてもらえる職場づくりが、人材不足の抑止につながります

採用力の強化

人材獲得競争の激しい市場で優秀なITエンジニアを確保するためには、戦略的に採用力を強化していくことが欠かせません。

ITエンジニアは転職業界では売り手市場となっています。守りの姿勢ではなく、採用ブランディングを含め攻めの採用をおすすめします

例えば、以下の方法を取り入れるとよいでしょう。

  • 社内制度や福利厚生を整備してアピールする
  • 実際にどのような業務を行うのかを、求人票に詳細に記載する
  • SNS等を通じて社内の雰囲気を発信する

応募者が入社したいと思えるような内容を意識し、積極的にアプローチを仕掛けましょう。

オフショア開発でITエンジニア不足が解消された事例

最後に、オフショア開発を活用して、ITエンジニア不足の解消に成功した事例を解説します。

ベトナムの開発会社である弊社「Solashi Co., Ltd」の事例を2つ取り上げます。

社内のリソース不足をオフショア開発によって解決|教育現場向けソフトウェア

教育現場向けソフトウェア事業を展開するEdv Future株式会社様の事例です。生きる力を育む成長型支援サービス「Edv Path」を提供しています。

社内にフルタイムエンジニアがおらずリソースが不足していました。また、実装から品質担保に時間を要し、開発が思うように進んでいない問題も抱えていました。

そこで弊社がご提案したのが、オフショア開発を用いた課題解決です。仕様確認 ・実装 ・品質担保を委託することで、クライアントはリソースを要件定義やチケット化に集中できました

結果的にリリースに至るチケット数が倍増し、毎週のリリースで機能拡張やバグの改修を実現できデリバリーが加速しました。

何度も断念したアプリ開発をわずか3ヶ月で実現|短期派遣マッチングサービス

短期派遣向けマッチングサービス「NEKONOTE」を展開する、株式会社トライフル様の事例です。

社内に開発リソースがなく、ITに詳しい人材が少なかったため、開発業務を外部発注していました。しかし、数回発注をしたものの、完成品は納品されない状態でした。

そこで弊社がおこなったのは、ITコンサルティングを通して実現したいサービスの言語化です。また、プロダクトロードマップを制作し、アプリの開発、納品まで請け負いました。

その結果、何度も断念していたアプリのリリースを、開発着手からわずか3ヶ月で完了させました。管理画面側の不具合も解消し、効率のよいアプリ運営を実現させています。

また、クライアントは過去にほかの会社へ依頼した際の投資を回収できていない問題も抱えていました。そこで弊社が提案したのが、補助金の導入です。無事採択され、潤沢な開発費用を確保するに至りました。

ほかにも弊社の充実した開発リソースを活用することで、エンジニア不足を解消した事例は数多くあります。ご興味がある方は、ぜひ「Solashi Co., Ltd」までお問い合わせください。

ITエンジニア不足の根本的な原因を理解し、適切な対策を講じよう

日本国内のITエンジニア不足の実態や、課題解決のために取るべき対策を解説しました。

ITエンジニアの不足は、多くの会社が直面する課題です。人材不足の原因と必要なエンジニア像を見極め、適切な施策を講じられるようにしましょう

ITエンジニア不足の一つの解決策として、オフショア開発があります。

Solashi Co., Ltd」では、事業の立ち上げ経験やスタートアップ経験のある日本人PMが在籍しています。また、ハノイ工科大学やベトナム国家大学など理工系最上位の大学を卒業したハイレベルなITエンジニアを中心に採用しています。

円滑なコミュニケーションのもと、充実したチーム体制で開発を進めることが可能です。

新規サービスの開発には、リーンスタートアップの手法を取り入れた開発をおすすめします。必要最小機能でリリースすることで時間と費用を抑えながら、効率のよい検証や課題発見・解決につなげられます。

ITエンジニア不足はもちろん、コスト削減や新規サービス開発を検討しているなら、ぜひ「Solashi Co., Ltd」にご相談ください。

島添 彰

合同会社Solashi Japan代表。1989年4月生まれ、福岡県出身。大阪府立大学大学院情報数理科学専攻修了。2014年サントリーホールディングスのIT機能をもつ「サントリーシステムテクノロジー株式会社」に入社。自動販売機の配送管理や効率化、販売管理システムの開発から運用、導入まで広く担当する。2017年にYper株式会社を創業、同社のCTO・CPOに就任。アプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」の立ち上げ・プロダクトのグロースに携わる。東洋経済社の名物企画「すごいベンチャー100」、Forbes誌による「Forbes 30 Under 30 Asia 2019」に選出される。

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